景観破壊の高層マンションで、市と業者に要望書!

 小樽運河の特別景観形成地区に隣接して、建設中のマンションや建設予定のマンションにより景観が破壊されるとして、小樽再生フォーラム主催の緊急市民集会が、9月6日(火)18:00から市民センター・マリンホール(色内2)で開かれた。
 問題となっているマンションは、大家倉庫裏に建設中の13階建て高さ40mの1棟と、博物館裏に建設する15階建て高さ44.6mの1棟の、計2棟の高層マンション。建設場所は、特別景観形成地区に隣接しているが、規制の対象外のため、札幌の業者により建設が進められている。
 大屋倉庫裏に建設中の高層マンションは、(株)東建地所(札幌市白石区)が建主の「ジェルム小樽運河」で、2004(平成16)年10月28日確認申請が出され、11月18日に建築確認が下りている。着工は11月22日、完成は2006(平成18)年3月31日となっている。
 博物館裏のマンションは、(株)クリーンリバー(札幌市西区)が建主で、確認申請は2005(平成17)年7月25日、確認は8月23日、着工は9月30日、完成予定が2007(平成19)年5月31日となっている。
 両高層マンションは、規制区域を外れているため、法的には違法性はなく、市も法的手続きをこなしていた。しかし、小樽運河保存運動に携わってきた小樽再生フォーラム(篠崎恒夫代表)は、小樽運河周辺の歴史的建造物群は、グラバー邸のある長崎の南山手地区と、異人館の並ぶ神戸の山本通と並ぶ、日本の近代史を象徴する三大景観地点である。マンション建設により、街角における空間が塞がれ、運河と倉庫の佇まいが、山並みと調和している眺望を、無機質な固まりが遮ることになるとして、付近の景観にマッチしたデザインで仕上がるよう熱望する要望書を、業者に送ることにした。
 また、小樽市に対しても、「私たちは、大規模建築物という規定がありながら、やすやすと高層マンションが隣接地に建つことを、市民感情として納得が出来ません。小樽市当局は、今回の建築物がどうして許されるに至ったのか、また、小樽市の財産を守る見地から、今後どのように景観行政を進めようとしているのかを、市民に対して明らかにして頂きたいと存じます。かつまた、こうした経済行為に対して、可能な限りの強力かつ迅速に働きかける措置をとるよう切望します」とする、「小樽運河地区の景観危機に関する要望書」を提出することにした。
 しかし、すでに建設中のマンションや確認済みのマンションに対しては、後手後手に回った感は否めず、有効な規制手段がないのが実情だ。市は、特別景観形成地区の範囲拡大を、早急に検討することにしているが、これとて現状を追認するしか方法がない。一方で、人口減による経済衰退に悩む市にとって、マンションによる人口増を期待する向きもあり、景観問題は今後も尾を引きそうだ。