小林多喜二の新資料収蔵!<市立小樽文学館>


takiji1.jpg 市立小樽文学館(亀井秀雄館長・色内1)は、小樽出身のプロレタリア作家小林多喜二に関する重要な資料2件を、新たに収蔵したと10月26日(水)に発表した。
 新たに収蔵した重要な資料2件は、多喜二が愛読し、自筆の書き込みが多数散見出来る小林多喜二旧蔵の阿部次郎「三太郎の日記」と、多喜二の北海道拓殖銀行入行・勤務・退職をめぐる一連の書類。
 「三太郎の日記」は、大正、昭和期の青年たちに大きな影響を与えた。多喜二も愛読し、尊敬する阿部次郎に原稿を送り、批評を求めたこともあったという。
 寄贈された書物には、「全然俺のハートを占領して了ふ女にぶつつかるまで、俺には移転の権利がある。俺には永久に移転の権利がある筈だ」の一節に傍線を引き、「俺の気持ちだ。(一九二四.四)」など、素直な感想が書き込まれている。この他にも多喜二自筆とみられる書き込みが多数見られ、他の人物の書き込みもあり、それらを対比することで興味深い事柄も浮かび、多喜二研究の貴重な資料となっている。
takiji.jpg 北海道拓殖銀行入行・勤務・退職をめぐる一連の書類は、辞令薄、職員表、銀行内部資料コピーなどが、北海道拓殖銀行より寄贈された。銀行内部資料コピーには、これまで判明していなかった小林多喜二解職の事由、退職手当金額などが明記されている。
 この資料から、解職事由は「左傾思想ヲ抱キ『蟹工船』『一九二八年三月一五日』『不在地主』等ノ文芸書刊行書中当行名明示等言語道断ノ所為アリシニ困ル」として、「昭和四年一一月一六日」に辞令が発令されていることや、退職手当金が半額に減額された事などの貴重な事実が読み取れる。また、欄外に「書籍発行銀行攻撃」と記され、当時の拓銀が自己保全のために多喜二の首を切った様が窺える。
 小樽文学館では、この新資料の収蔵に対応して、11月23日(水)14:00から、亀井館長による講座「書き込みに見る多喜二との同時代」を聴講無料で行う。寄贈資料の小林多喜二旧蔵・阿部次郎著「三太郎の日記」を紹介しながら、小林多喜二を含む複数の人の書き込みを通して、同時代的な読みの色々な側面を紹介する。

 市立小樽文学館HP


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