道立近代美術館の『出張アート教室』 松ヶ枝中学校


artdeliveryclass1.jpg 北海道立近代美術館主催の「出張アート教室」が、小樽市立松ヶ枝中学校(藤崎淳校長・182名 )の1年生52人を対象に、10月16日(火)、5校時目に1組、6校時目は2組に行われた。
 北海道立近代美術館では、昨年美術館工事のため「出張」したことがあり、今年は本格的に「出張アート教室」を開始した。絵の見方の面白さを感じてもらおうと、同館所蔵の美術作品を学校へ運び、生徒に実物を見せながら、分りやすく鑑賞の授業を行った。北海道立函館・旭川・帯広・釧路の美術館でも行われている。
 今年度は、石狩、後志、胆振管内の6校を予定し、6校とも違う美術作品で、学芸員もそれぞれ異なる。
 今回は、同美術館学芸第三課長・中村聖司氏が講師となり、サリヴァドール・ダリ「シュルレアリスムの思い出(天空の象1971年)」とジャン=ミシェル・フォロン「ジャングルの静物(1972年)」の2点を持参し、「美術のなかのモンスター」と題して行われた。
 初めに「美術館の仕事は、美術作品を展示し、人間が生み出した貴重なものを100〜200年後の人々にも見てもらおう、知ってもらおうと作品を収集している。保管場所は、室温20℃、湿度50〜60%を保つようにしている。専用のトラックで搬送している。この絵画2点を見て、作品に関係する話を聞き、実物を観る面白さ、美術の広さを知ってもらいたい」と話した。
artdeliveryclass2.jpg 「身の回りのモンスターは、実は絵が基になっているものが多く、13世紀前半など古くから龍やモンスターを描いた作品がある」と説明し、美術作品を画像で紹介した。ダリの作品で初めて象を取り入れた『原子力ウランの牧歌的憂鬱』を紹介。「超現実主義(シュルレアリスム:芸術の形態・主張の1つで、夢の中を覗いているような独自の現実感)で、自分の中から沸いてくるものを描いている」と説明した。
 フォロンの作品は「街のジャングルー怪物」などを紹介した。中村氏は「ダリの版画の象は、普通の象とどう違うか?象がとても大きいことを現すためにどんな描き方をしたか?フォロンの版画に描かれているものは何か?矢印の怪物を道路標識から考えたが、どうして標識を怪物のように描いたのか」と質問し、「正解は無いけれど、皆さんに考えてもらうことで、絵を鑑賞することのひとつになる。絵を細かく深く広く見たり、形を見たりすることで、想像し考えると面白く鑑賞できる」と話した。
 生徒は、ダリやフォロンの作品を身近で鑑賞し、質問の答えを探していた。1組の横川瑠花さんは「分りやすく興味を持った。楽しかった。遠くからでは分らないが、近くで見るといろいろなことが分った。象の体が部屋のようになっていた。今度は、北海道立近代美術館へ行ってみたいと思う」と感想を述べた。
 藤崎校長は「直接美術作品を子ども達が見ることにより、学芸員からの説明を聞いて、美術教科での1年生の目的にある、”美術作品に興味関心を高め美術鑑賞の仕方を学ぶこと”への目的達成に近づけたと思う」と話した。