躍動する風景画 没後30年 中村善策展始まる


 市立小樽美術館(色内1)では、「中村善策記念ホール開設25周年特別展”風景画の躍動感 没後30周年 中村善策展”」の開催が、7月6日(土)から始まった。
 中村善策は1901年小樽市に生まれ、風景画を代表する画家。14歳で小樽洋画家研究所に学び、1924年に上京。二科展、一水会、日展を発表の場とした。1983年に82歳で逝去。その5年後、同館に「中村善策記念ホール」が開設された。写実を基とした人間味溢れる風景画が特徴。今年2013年は、没後30年、記念ホール開設25周年を記念し特別展を開催。

nakamuraensaku4.jpg nakamuraensaku5.jpg

 同展は、1階の記念ホールで、画家を志すきっかけとなる小樽洋画研究所の面々が集い、将来の公募展を目指した「太地社」のメンバーの作品と共に中村善策の初期作品を展示する「第1部 中村善策と小樽の群像」を開催。2階では、当館の代表作を初公開作品と併せて展示する「第2部 中村善策の黄金期」を開催している。
 9:15より1階エントランスホールで、オープニングセレモニーを開催。中村善策の遺族を代表して中村憲さん夫妻(東京在住)をはじめ、小樽市教育委員会・高木正一委員長ら関係者が出席して行なわれた。
nakamuraensaku1.jpg
 高木委員長は、「中村善策は、生まれ故郷の小樽には深い愛着を持たれていたと聞いている。大らかで健康的な明るい小樽の風景画の作品が沢山残されている。この小樽が持つ、海、港、運河、そして起伏にとんだ地形に点在する家並みの景観が、中村善策という風景画家を育み、生み出したと言える。5年ごとに特別展を行ない、今年は節目の年となる。市民の強い思いで作られた美術館や中村善策記念ホールは、今もその思いが受け継がれている証であり、ありがたく思う」と挨拶した。
 市民や関係者が取り囲む中、テープカットが行なわれた。その後、同展を待ちわびていた市民や関係者が中村絵画を鑑賞した。学芸員による解説も行なわれた。
nakamuraensaku2.jpg 中村善策は、初夏の季節には故郷小樽へ帰り、南小樽駅近くの魚松旅館に泊り、野外制作に励んだ。1937年の「けむり」は、かつて小樽港にあった浅橋ビアホールの窓辺で、蒸気船からの煙を見つめる女性の後ろ姿の人物が描かれた珍しいもので、第1回一水会に出品した作品。同会員に推挙され、昭和画家奨励賞を受賞している。
 「海港の秋(1959年)」は、生家から近い、幼年期によく遊んだ小樽公園からの景色。スケッチブックを持って初めて風景画を描いた思い出の地となっている。
 信州での作品も多く、「春の片峡(1949年)」は、東京から通い、3ヶ月ほどかけて作品を仕上げている。北アルプスの山襞を消去し、現場で比べてみると違いが分かり、建物になるように風景を組み立て直す描き方をしている。1950年から1960年代は、躍動感溢れる風景画を確立した黄金期で、「善策張り」と言われる画風は、現実の風景より生き生きと豊かに表現した独自の風景を特徴としている。
nakamuraensaku3.jpg 個人寄託作品15点や平成24年度新収蔵品10点の初公開作品と代表作を一堂に展示している。
 遺族の中村憲氏は、「多くの画家がいる中で中村善策の故郷の小樽で収蔵し、常設場所があり、努力してくださった皆さんには、常に感謝が絶えない」と話した。
 市内在住の男性は、「中村善策の絵画は、若い時からファンだった。風景をスケッチして描く人で、絵から感じる息遣いが違う。代表作『けむり』のモデルは実在した人物で会ったことがある」と作品を楽しんでいた。
 中村善策記念ホール開設25周年記念特別展「風景の躍動感 没後30年 中村善策展」
 7月6日(土)〜9月16日(月・祝)9:30〜17:00(最終入館16:30) 休館日:月曜日(祝日は翌日)
 観覧料一般500円、高校生・市内高齢者250円、中学生以下無料
 問合せ:0134-34-0035 市立小樽美術館(色内1-9-5)