伊藤整生誕110年 文学館で特別展


110itosei1.jpg 小樽を代表する文学者・伊藤整の生誕110年を記念して、市立小樽文学館(色内1・玉川薫館長)で、特別展「伊藤整展」が4月4日から始まった。伊藤整の生涯について、父・昌整を含め、ほぼ網羅することができる特別展となっている。
 同館では、伊藤整の業績を紹介する特別展や企画展を6回開催してきた。今回の特別展は、今年、伊藤整の生誕110年の節目となり、昨年25回目で幕を閉じた「伊藤整文学賞」の功績を称え、64年間の密度の濃い生涯を物語る貴重な資料約300点を展示している。
 伊藤整は、1905(明治38)年、松前郡に生まれ、翌年、忍路郡塩谷村(小樽市塩谷)に移り住み、上京する1928(昭和3 )年まで小樽で過ごす。12人兄弟の長男として育つ。1つ先輩となる小林多喜二らが通う小樽高等商業学校(小樽商科大学)で学び、卒業後は教師となり、1914(大正3)年、詩集「雪明かりの路」を自費出版した。110itosei2.jpgその後、上京し、小説・翻訳・評論家など多彩に活動し、数々の作品を世に送り出す。1969(昭和44)年に64年の生涯を閉じる。
 父・昌整にまつわるコーナーでは、父が戦地を体験した日露・日清戦争などに関する父の資料と合わせ、伊藤整が集めた地図や、父の足跡を辿った旅日記や時刻表など、父の生涯を綴る「年々の花」のための資料が、伊藤整の遺族の協力を得て初展示された。
 伊藤整の小学校の通信箋や中学校時の作文、小樽高等商業高校の卒業証書、実物の詩作ノートなど貴重な資料の他、愛用のカメラ・レンズ・引伸し機・現像液から洗浄パットまでも展示。小樽花園町にあった喫茶店「越治」や1950(昭和25)年頃の東京(日野市)での書斎を再現。
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 また、1970(昭和45)年、小樽市塩谷(通称ゴロダの丘)に、伊藤整文学碑が建立された当時の様子を撮影した映像を初公開した。伊藤整の旧友をはじめ、塩谷の有志が建立に携わり、碑には、伊藤整の詩「海の捨児」が書かれている。
 伊藤整は、ありとあらゆる資料を保管していた人でもあり、「チャタレイ夫人の恋人」を全訳した伊藤整の大胆な描写が問題となった「チャタレイ裁判」に関する資料では、出頭命令をはじめ、在宅起訴状、抗議する匿名のハガキなども展示している。
 同館・玉川館長は、「作家の仕事を通じて、長い歴史に渡り、多くのものを残しているが、どんな仕事をしたのか知られているとは言えない。110itosei4.jpgこの特別展では、どんな仕事をしてきたか、64歳の生涯は密度が高く誠実な仕事をしたことを、会場で伝えられると思う。改めて、見直してもらたい」と話した。
 ◎伊藤整展 4月4日(土)〜5月31日(日)9:30〜17:00(入館〜16:30)
 市立小樽文学館(色内1)展示室
 月曜日・4月30日・5月4日・7日・8日・12日・13日休館
 入館料:一般300円・高校生・市内70歳以上150円・中学生以下・障がい者無料
 ◎特別展記念講演「伊藤整をめぐって」 5月23日(土)14:00
  ●「挑戦的な文学史観ー文学史家・伊藤整の達成ー」亀井秀雄(近代文学研究者)
  ●「父・伊藤整」伊藤礼(英文学者)
 市立小樽文学館1階研修室 申込みは事前に文学館(0134-32-2388)へ