「新聞記事拾い読み」発刊講演会 小樽文学館


 小樽文学館叢書第3巻「新聞記事拾い読み」の発刊を記念して「おもしろいむかしの新聞」と題した講演会が、9月20日(日)14:00から、市立小樽文学館(色内1)1階研修室で開かれ、約40名が聴講した。
 著者の渡辺真吾氏が講師を務め、本の挿絵を担当したイラストレーターの高山美香氏と、出版に携わった佐藤圭樹氏(有限会社ウィルダネス)の2人も出席して開かれた。
hiroiyomi1.jpg 同館・玉川薫館長は、講演に先立ち、「優れた面白い小樽の歴史を、少し違う角度から見た本の内容を知ってもらい、多くの人に読んでもらいたい」と挨拶した。
 講演会では、出版した本に掲載した新聞記事の中から、さらにピックアップして、明治25年から大正7年までの小樽新聞や北海タイムスの記事7編を紹介した。
 渡辺氏によると、昔の記事は、臨場感溢れる記事ではあるが、記者自身は取材せずに、探訪記者の報告やメモから、まるで見てきたような記事を書き、突飛な記事が多かった。プライベートな内容やオーバーに伝えたり、比喩的表現や押し問答をそのまま載せたり、末尾には記者の感じたままの感想などが書かれている。市民のプライバシーもなく、実名で載せていたという。
 明治36年山田視学官(北海道庁)の靴問題の記事では、学校の設備や教員等を見て回る人・山田視学官が、旭川の学校を訪問した際に、校長が上履きを差し出したが、客に対する礼儀を知らずなどの暴言を吐き、上履きに履き替えず、靴を脱がずに学校へ入り大問題となった。
 また、大正7年の北海タイムスは、「香典宙に迷う」と題して、死人が蘇った篠路村の珍事が掲載された。
 産後の肥立ちが悪く、36歳の女性が死亡したと知らせを受けるが、息を吹き返した。すでにもらった香典は、今更返すに返せない事態となり、「香典宙に迷い居るとは近頃の珍事というべし」と記事の末尾には、記者の感想めいた文で締めくくられている。
hiroiyomi2.jpg 渡辺氏は、大きな事件性に至らぬ何でもない出来事を、面白おかしく掲載した記事を拾い集め、その時々の時代背景を交えながら新聞記事を紹介した。
 「昭和では、淡々と書かれている記事が多く、取るに足らない個人のプライバシーが書かれたものは、大正時代で終わった。戦時中は紙がなく、配給場所などを掲載し紙面が埋まった。このような内容の新聞記事の復活はできなかった。娯楽の要素は雑誌などに引き継がれた」と語った。
 高山氏は、「読み始めると面白く30枚以上のイラストを描いた。インパクトのある言葉が面白く、”背部にかみつく”や”人頭大のにぎりめし”など印象に残った。大きな事件には至らず、ほのぼのとしている。どれも面白く忘れられない話」と述べ、佐藤氏は、「高山さんのイラストを載せたことにより、硬い印象をソフトにし絶大な効果となった」と評価した。
 講演終了後、玉川館長は、「昭和を除けば、新聞記事は明るくたくましく、活き活きしたところを見逃していない。無名の人が大騒動を起こすなど、誰の人生も豊かで、文字に残っていることは素晴らしい。小樽はとても豊かな町で、もう少し幅広く捉えてくれればと思う。それを、渡辺君が実行し、良い本となった」と話した。
 参加した女性は、「膨大な新聞の中から面白い記事をピックアップし、話を聞き、他にもどんな話があるのか読んでみたくなって本を買った」と楽しんだ様子だった。
 小樽文学館叢書第3巻「新聞記事拾い読み」
 著者:渡辺真吾・定価1,200円(税別)
 発行:小樽文學舎
 市立小樽文学館(色内1)カウンター、小樽文學舎、市内の主な書店で販売中。文学館と通販での購入者に限り、イラスト絵葉書をプレゼント。
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