蜃気楼のすべて! 博物館のギャラリートーク


 小樽市総合博物館(手宮1・石川直章館長)は、開催中の蜃気楼写真展に合わせ、6月25日(土)10:30から、ギャラリートーク「蜃気楼のすべて」が開かれ、市民ら15名が蜃気楼の話に耳を傾けた。
gallerytalk1.jpg 蜃気楼の研究を続け18年目を迎える同館・大鐘卓哉学芸員が講師を務め、小樽をはじめとする国内7地域の蜃気楼を展示写真とともに解説した。
 同写真展は、日本蜃気楼協議会と共催して、今年4月に発売された「蜃気楼のすべて」に掲載の写真を展示して開かれている。執筆者は気象予報士や学芸員など同協会会員で、地元で蜃気楼の観測を続けメカニズムを研究している。
 蜃気楼には、上位蜃気楼と下位蜃気楼があり、あまり見ることのできない上位蜃気楼が発生する7地域を紹介した。
 晴れた日で南風が吹き、ほどよく対岸に建物があり変化を確認できることが、蜃気楼の条件。
gallerytalk2.jpg 魚津市(富山県)は、蜃気楼を観光資源とし、3月から5月のシーズン中には、多くの観光客が訪れている。同市で観測された新湊大橋のアーチがZ字型に変化したり、夕方には、オレンジ色に染まり、同橋が何層にも重なって見え、上位蜃気楼のベスト版と言える光景だ。
 蜃気楼の観測場所は、海だけではなく湖でも観測されている。
 日本一大きな湖の琵琶湖(滋賀県)では、Z字型に変形する琵琶湖大橋、猪苗代湖(福島県)では、10km以内の対岸の建物が変化する近い距離での蜃気楼で、大きな変化を楽しむことができる。同湖を航行する遊覧船「はくちょう丸」など、動くものの蜃気楼を観測できるのが特徴のひとつ。大阪湾でも航行中の船の蜃気楼が見られる。
 北海道では、小樽で観測される高島おばけをはじめ、斜里町や苫小牧で観測されている。
 小樽の蜃気楼シーズンは、4月から7月と言われるが、斜里町は真冬にも見られ、一番多く発生している。流氷が蜃気楼になる幻氷やマイナス20℃の真冬、網走の夜景が放射冷却現象により蜃気楼が発生した珍しい画像を紹介した。
 また、苫小牧では、火力発電所や石炭サイロの施設の変化が見られ、太陽が四角や盃型に変形する蜃気楼は、小樽と斜里町で観測されたもので、参加者は、蜃気楼の不思議な現象に興味深く見入った。

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 その後、蜃気楼のメカニズムを理解するために、実験室へ移動し、水槽に食塩水と水道水を入れ、液体の濃度差を利用して蜃気楼を再現。水槽を通してみると、図が伸びたり縮んだりし、上位蜃気楼を観察した。
 参加した朝里海岸付近に住む女性は、「水平線が盛り上がっているのを見たことがあり、興味があり参加した」と話した。
 大鐘学芸員は、「今日の話を聞いて、蜃気楼を観測するために行ってもらえれば、素晴らしい。小樽では朝里海岸からの観測がお勧めです」と話した。
 蜃気楼写真展 5月1日(日)〜7月18日(月・祝)9:30〜17:00
 小樽市総合博物館(手宮1)2階回廊 火曜(祝日の場合は翌日)休館
 入館料一般400円、市内高校生・70歳以上200円、中学生以下無料
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