能の世界へ誘う! 外沢照章能面展


 小樽在住の能面作家・外沢照章氏の第12回能面展が、8月2日(火)から7日(日)まで、小樽市公会堂(花園2)地下展示場で開催中だ。
noumenten1.jpg 会場では、7つのカテゴリー順に展示されている。今回の展示会では、新作4点を含む44点と、木地仕上げ品(モデル面)を合わせ約70点を展示。
 公会堂に隣接する能楽堂を眺め、能舞台の雰囲気を感じながら、様々な物語の中で演じられる能面が一堂に展示され、見応えがあり、市民が能面に親しめる絶好の機会となっている。
 会期中常駐の外沢氏から詳しい解説を聞きながら、能面を鑑賞することもでき、希望があれば、能面(モデル面)を手に取り触ってみたり、顔につけた時の視野を体験するなど貴重な場を提供している。
 今回の新作4点は、能面3点と狂言面1点を発表。鹿から生まれた仙人「一角仙人」や、増女の特徴を強調した「泣増」は、悲しみに暮れている増女で、宝生流の専用面。
 中でも外沢氏の一押し「平形般若」は、室町初期の頃の般若の原形とも言われる。女性の怨霊面として登場する。般若は、嫉妬した女性で、嫉妬の度合いは角や目、歯を金色にして表現している。
 「賢徳」は狂言面で、ギョロリとした目が斜め上を向き、むき出しの上歯に特徴がある。

 能面は250種類あると言われ、能面の基本形の92種類を全部作り上げることを目標に、7つのカテゴリー(翁系・鬼神系・尉系・男系・女系・怨霊系・狂言系)をまんべんなく打つことを理想としている。今回新作4点が加わり、現在、66種類・89点の能面を完成させた。
 江戸時代以前に作られた面を本面と呼び、その後は、その基本形を模作し、どれだけ本面に近づけるか、使いこまれた色彩が剥がれ木肌がすり減った状態や面の傷などを細かく再現している。
 翁系の髭は、白馬の鬣(たてがみ)を染めて使用すること、能の上演されている演目は約240曲あり、内面の物語で恨み辛みを題材にしてものが多いこと、能舞台についても聞くことができる。
noumenten2.jpg 「蝉丸」は、皇子でありながら盲目の少年で、のちの琵琶の名士となった面。能のメインは女性の面であり、若い女から老女まである。小面は若い女性で、豊臣秀吉が3つの小面を雪・月・花と名づけて愛玩した。
 観世流の「若女」は、小面と増女を掛け合わせ、ふっくら感と受け口が特徴。それぞれに目の位置や頬の高さ、眉や口に違いがある。「近江女」は平民役で下歯があったり、絶世の美女小野小町が老いた「小町老女」は、薄い白髪を1本ずつ手書きしている。
 面の中でも来場者にインパクと与える「般若」は、女性の嫉妬を表現。人々の興味を集め、物語の題材にも多く使われている。嫉妬の深さで初期の生成、中期の般若、末期の蛇。色も白・赤・黒の3種類に分類される。
 カテゴリーの最後は、狂言面が展示され、外沢氏の初めて制作した作品や、今回の新作「賢徳」も展示されている。狂言の面は30種類あると言われる。
noumenten3.jpg 外沢氏は、1942(昭和17)年東京に生まれ、建具職人の父親のそばで、子どもの頃から木を削って遊んでいた。父親が亡くなった時に使用していた突ノミなどを譲り受けた。1978(昭和53)年の「別冊太陽」に掲載された能面と出会い、42歳の時、近くの能面教室を訪問したことが始まりとなった。
 2003(平成15)年に小樽に移住し、今年で13年目となる。2006(平成18)年に初個展を開催。2009(平成21)年からは、公会堂で毎年開催し、夏のこの時期の恒例行事となった。2014(平成26)年には、能面を打ってから30年目を迎えた。
 その他、根付の「翁」や「大べし見」「嘘吹」「雷」のブローチやループタイ、お地蔵さんの可愛らしいストラップ等も展示している。
 外沢氏は、「色々な種類の面を展示し、能と能面は奥深い。また、来年は少しずつ内容を切り替えていく予定。能の物語のバリエーションを皆さんに理解してもらえるようにするのが僕らの目的でもある。能の鑑賞には、最初に物語を読んでから出かけ、先に状況を作り、そこへシテが飛び込んでくるような鑑賞の仕方をしてもらいたい。能は、身近な生活を題材した物語で、その当時の生活の様子も知ることができる」と話した。
 第12回外沢照章・能面展 8月2日(火)~7日(日)9:00~17:00
 小樽市公会堂(花園5)地下展示場 入場無料 
 作家会場待機時間10:00~12:00・14:00~7:00
 外沢照章・能面ギャラリー日記
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