川上麻衣子さんに聞く!スウェーデン芸術祭


 小樽で初めて行われる国際芸術祭「スウェーデン芸術祭 IN 小樽 2018-旅(トリナス)する思考-」が7月21日(土)から始まった。
kawakami1.jpg 展覧会ナビゲーターを務める、女優で小樽ふれあい観光大使の川上麻衣子さんは、ガラスデザイナーでもあり、今回、自身の作品を2点出展している。川上さんに、小樽への思いや、芸術祭について話を聞いた。
 ■小樽と関わることになったきっかけは?
 1991(平成3)年に旅番組で小樽を訪れた際、ガラス作家を紹介していただき、それをご縁にその方と一緒に、作品作りをわりと長い間していました。
 プライベートでガラスを吹きに小樽に来ていたところ、観光大使就任のお話をいただき、お受けいたしました。
 当時、ご一緒させていただいていた作家さんは、台湾に行かれてしまって、今、小樽には住んでいらっしゃいませんが、小樽に来ることは続いていますね。
 ■ガラス作りを始めたのはいつ?
 私は、スウェーデンのストックホルムで生まれました。スウェーデンはガラスが盛んなので、それでガラス作品を集めるのが好きでした。
 最初、青森に工房がある作家さんに声をかけていただいて、「自分で吹いてみたら」と言われてガラス作りを始めました。その作家さんがお亡くなりになり、一度、ガラス作りの縁も切れてしまっていたんですが、1991年に小樽でまた始めたということです。
 その後、東京でも少し学校に通って、吹きガラスをしたりしましたが、2005(平成17)年に初めて個展を開催し、それからは2年に1回のペースで個展を続けています。
 個展の傍らデパートなどでも展示会をやらせていただいたりしています。小樽に来て試作品作りなどもしていますよ。
 ■小樽の街に対する印象は?
 小樽は大人の街だと思います。特に運河沿いの景色はヨーロッパにも繋がるところがあると思いますし、しっとりしていて良い印象がありますね。
 観光地化され過ぎている町は多いですけれど、小樽はまだそれがないと思います。オルゴールやガラスのイメージも強いので、ロマンチックな気持ちになります。
 ■出展作品について
kawakami2.jpg 白黒のお皿と、グレーとピンクのキャンドルスタンドの2点を出展しています。
 お皿のほうは、1991年に小樽に番組で来た時に作った作品です。ちょうど冬だったので雪が降っていたんですが、その雪がスウェーデンの雪のようなパウダースノーでしたので、タイトルも『パウダースノー』にしました。
 キャンドルスタンドのほうは、2008(平成20)年にスウェーデンの工房で初めて作った作品です。
 ■ガラスの魅力は?
 私は吹きガラスが好きなんですが、1600度の熱い窯に溶けているガラスを竿で巻き付けて作る過程も面白いし、作業としてはハードですけれど、出来上がったものがとても繊細になるので、それが魅力でもありますね。
 2005年に個展を始めた時からは、私がデザインしたものを職人さんに作っていただくことをメインにしています。器に関しては特に同じものをたくさん作るには職人さんでなければできませんし、自分の技術ではできないものを、職人さんと試作を繰り返して作っています。
 作品としては片口やお猪口とか、日本酒の器がすごく増えました。小樽はお寿司屋さんに行くと、お猪口がみんなガラスじゃないですか、それが嬉しいですね。東京であれば漆だったり陶器だったりですから。
 ■芸術祭の見どころは?
 スウェーデンの作家の作品がただ来るということではなくて、スウェーデンから作家が実際に来て、この土地に触れてもらって、作品を作ってくださることがとても貴重なことだと思います。
 スウェーデンの方と実際に会ってみると、これまで抱いていたイメージとは随分違っていることを感じると思います。
 サンモール一番街の屋台村に行って、みんなで食事をしましたが、スウェーデンの方は飲むと歌うのも踊るのも大好きで、最後はストリートピアノで若者と一緒に踊っていました。そんな交流が出来ることは本当に素敵なことだと思います。
 スウェーデンは北海道と気候も近いですし、スウェーデン人は日本人に似て、人見知りする方も多いんですよ。
 ■今回を契機に小樽とスウェーデンの関係に期待することは?
 スウェーデンはアートがとても盛んな国なので、観光大使をしている街で、スウェーデンを紹介できることはとても嬉しいことです。
 小樽は小さい街ですが、すごくまとまりが良いところだと思います。ストックホルムもとても小さい街で、小樽の規模に似ていますので、まちづくりなどもすごく学べるところがあると思います。
 スウェーデンでは開発されている街と、一切、景観を変えてはいけない地域がはっきり分かれていて、新しい街と旧市街とのバランスがとても良いので、そういうところは何か参考になるのではないでしょうか。
 ■まちづくりに対するアドバイスなどありますか?
 札幌に泊って、小樽は遊びに来るだけで帰ってしまうことが多いという話がありますけれど、だからこそ守られている静けさもあるのかなとは思います。その辺は難しいところだと思いますが、小樽は、ヨーロッパの美しさとか、ちょっと大人っぽさがありながら、食べ物は美味しいし、温泉もすぐそばにあるので、もう少しゆっくり過ごせる場所、腰を据えて過ごせる街です。
 昔なら、作家が逗留して小説を書いているような、何かそういうのがすごく似合う街だとも思います。今、ガラス作家さんが増えて工房を開いている方もいらっしゃいますので、芸術的なことが盛んになり、ここでモノ作りができたり、ゆっくりとモノを考えることができる街になれば良いなと思います。
 ■ありがとうございました。