風雲急を告げる市立病院 退職金に約40億円必要


 患者・医師・看護師の“逃散”で、風雲急を告げる市立病院事業が、民営化した場合の退職金は、約40億円が必要との試算が、市から出された。
 山田勝麿市長は、開会中の第3回定例会本会議で、「病院事業を民営化した場合の病院職員の退職手当の見込みは、指定管理者制度の導入や民間移譲の場合は、移行の際、退職手当を支給する必要が生じますが、異動可能な事務職員を除いた概算では、約40億円の財源が必要になると試算しております」と答弁した。
 小樽市病院事業会計では、職員が自己都合で退職した場合に支給する退職手当給付金を計上しなければならないところ、破綻した会計では財源がなく、全く計上していなかった。
 2006(平成18)年度からは、団塊世代の退職金の支払いのために、「退職手当債」の発行が可能になり、2006(平成18)年度末は1億7,600万円、2007(平成19)年度末は4億8,800万円を計上した。しかし、手当債は、あくまで借金であり、支払いによって借金が膨らむだけだ。
 市の病院事業会計では、退職給付引当金の項目はどこにも見当たらない。退職債務のゼロ表示は、財務会計では罪が重いとされている。
 退職給付引当金や退職手当債は、固定負債とされる。引当金のゼロ表示は、負債の過少計上、利益の過大表示となる。市は、これまで、この引当金を計上していなかった。この額を算入すれば病院会計は、さらに悪化する数字となる。
 病院事業(平成19年度)決算では、欠損金72億5,700万円、累積赤字37億8,000万円、一時借入金44億9,000万円という負のマイナス数値が目白押しで、破綻している会計の内実を物語っている。このような破綻したボロボロの病院を民営化することは、市の財政からも到底困難だ。
 民間譲渡するとしても、市内の公的病院や民間病院も、このボロ病院を引き受けるところはありえない。
 しかし、病院管理者の山田市長自らの口から、退職金の必要額が約40億円に上るとの試算が出された衝撃は、関係者に大きな影響を与えよう。仮定の話が、やがて現実の話として語られる可能性が高くなる。 
 本社の調べでは、市立2病院を止める場合の必要退職金は、事務職を除き、医療技術者と看護師の約470人で、40億5,900万円であることが分かった。
 今後も病院関係者の退職が相次ぎ、来年3月には、技術者や看護師などを含めると約35人程度が退職することが見込まれている。
 退職給付引当金がゼロの病院会計では、相次ぐ退職者の退職金支払いに追われることになる。このためには、さらに借金を重ねるしか道はない。
 市長の口から、仮定の話とはいえ、約40億円の退職手当が必要との試算が出されたが、その財源手当もないままでは、医師・看護師の逃散が、さらに加速することになる。
 平成19年度の小樽市病院事業会計決算審査意見書を掲載するので、この実状をじっくり見ていただきたい。こちら 
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