12年ぶり 野生のトドを保護 おたる水族館

 おたる水族館(祝津3)の海獣公園にいるトドの仲間たちの鳴き声に誘われて、石狩湾内を遊泳していた野生のトドの子供(推定1歳)が、3月13日(金)に同館にやってきた。同館飼育員は、発見したトドの体が弱っていることを確認し、すぐに保護して体調管理などに精を出している。
トドは、アシカ亜目アシカ科アシカ亜科トド属の海棲哺乳類。アシカ科の中では最も大きく、雄の体長は平均3m、体重は670kg、雌は体長2.3m、体重270kg。温暖な東部太平洋に生息し、日本では、10月から5月頃まで北海道沿岸にやってくる。石狩湾内に来遊する姿が毎年見られている。
突如現れたトドは、海獣公園の柵をよじ登ってきたのかは不明だが、体は弱っていた。体長1m50cmの生後1年程度の大きさ。性別不明。07:30頃、3月20日(金)からのオープン準備を行っていた作業員が、普段見慣れないトドの子供が海獣公園にいるのを発見し、すぐに飼育員に連絡した。飼育員は、トドが弱っていることを確認し、大きなバケツなどを使って、直ちに飼育小屋の中へ移した。
角川雅俊・海獣飼育課長補佐は、「今年は、石狩湾内に来遊するトドが多かったので、その中の一頭だと思う。何かしらの理由でここまで流れ来てたのだろう。発見した時にはすでに体が弱っていたので、これから熱を測ったりと検査・治療を行う。体力が回復した時に放流させるべきなのだが、漁の被害も受けるという事実があるので、放流は難しいかもしれない」と頭を悩ませていた。
営業課の川尻孝朗さんは、「ここ最近、この周辺で大きなトドと小さなトドの目撃情報が届けられており、うちで保護してくれという話も寄せられていた。もし、そのまま遊泳していたら撃たれていたかもしれないので、その前に保護出来てよかった。水族館の仲間達の鳴き声に誘われたのかもしれない」と胸をなでおろしていた。
保護されたトドは、感染症も患っている可能性もあり、少しやつれた表情で柵に寄りかかっていた。寒い小屋の中で体から湯気を出し、様子を見に来た飼育員が近づくと、声を振り絞って警戒するそぶりも見せていた。
同館では、12年前にもトド一頭を保護しており、そのトドは、カンタロウと名づけられ、現在、同館内で一番大きいオスに成長している。飼育員たちは、12年ぶりに突如現れたこのトドも、カンタロウのように元気に成長することを願っている。