春の風物詩「高島おばけ」を観測 蜃気楼で伸びる貨物船


 全国でも珍しい蜃気楼が、小樽市内各地で観測され始めた。ゴールデンウィーク中の5月4日(月)には、石狩湾新港沖合いに、一般の人の目でも確認出来る中規模の上位蜃気楼が現れた。
 蜃気楼は、温度の異なる空気の境界で光が屈折するため、遠くの景色が通常とは違って見える現象。科学的に「大気光学現象」と言われる。4月から6月頃に数回しか観測出来ず、小樽では、春の風物詩ともなっている。明治時代の書物(三航蝦夷日誌)に「高島おばけ」と記されており、今でも、この名が使われている。

 上位蜃気楼と下位蜃気楼の2種類があり、「高島おばけ」は上位蜃気楼。上方に反転像が見え、限られた地域で年に数回しか観測されない珍しいもの。北海道では14ヶ所、本州では7ヵ所で観測されているが、毎年観測されているのは、道内の石狩湾・オホーツク・苫小牧のみ。下位蜃気楼は、全国の各地域で年中見られる。
 蜃気楼の調査研究を行う市総合博物館(手宮1)の大鐘卓哉学芸員は、「小樽の蜃気楼は、石狩平野の辺りから流れる暖かい南の風と石狩湾の冷たい北風が重なり合って発生する」。市内では、高島や厩岸壁、朝里、銭函などの海岸が、観測のおすすめスポットという。
 今年1番最初に確認されたのは、4月12日(日)13:45頃、高島にてドリームビーチ方向を直接観測。続いて、4月20日(月)12:30頃、高島無人カメラが石狩湾新港方向が蜃気楼になっているのを観測。さらに、4月29日(水)12:30頃、高島無人カメラが石狩湾新港方向が蜃気楼になっているのを観測した。いずれも、小規模だったことから、特に取り上げることはなかったとしている。
 5月4日(月)に銭函海岸で観測された蜃気楼は、中規模で、一般の人の目でも確認出来るものとなった。16:00頃、石狩湾新港沖合いに停泊中の貨物船が蜃気楼となって、縦に伸び上がるという現象を見せた。
 この模様を、札幌在住のシステムエンジニア・柴田進さん(52)が観測・撮影し、本社に報告を寄せてくれた。

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 撮影日時:5月4日午後4時頃 画像の上から16:24(通常の見え方)、16:14、16:18です。
 撮影場所:小樽・銭函海岸から石狩湾新港沖合
 撮影者: 柴田 進 (システムエンジニア、パソコンスクール講師)
 コメント:「4日の天気予報や毎時発表される気象庁の午前の気象データをチェックしたところ、蜃気楼の発生確率が高いと予想したので、銭函海岸へ向かう。
 午後4時過ぎから4時30分頃まで、石狩湾新港沖合に停泊中の貨物船が、蜃気楼化して、伸び上がっているのを確認。望遠レンズを使い、その姿を撮影した。
 一番上の画像は、普段見慣れた通常の状態に近い貨物船の姿です。しかし、16:14には、それぞれの貨物船の甲板下側の部分が伸び上がりました。
 また、4分後、右側の貨物船の甲板下の黒と赤の塗料のうち、より下側の赤の部分が
伸びあがっているのがわかりました。一番下側の部分が、屈折現象によって伸びあがっているようです。
 光の屈折現象とはいえ、いつ見ても不思議な現象です。それが、江戸末期から小樽で知られている『高島おばけ』のおもしろさです。毎年、今頃から6月末ぐらいまで条件がよければ見ることができます。
 暖かく、風や波が穏やかであれば、小樽港や朝里、銭函、名前にもつけられた高島、祝津あたりでも見ることができますので、お出かけになるのもよろしいのではないでしょうか。
 休日に、小樽市民ばかりでなく、近隣の方や観光客の方にも楽しんでいただければと思います。ぜひご自分の目でどうぞ。
 以上」。柴田さんのHP

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 大鐘学芸員は、「蜃気楼のシーズンは始まったばかりで、今後6月にかけてもっと大きいものが観測出来る。ポカポカ陽気の暖かい日に、南の風が吹いている時が発生する確率が高い。高島や朝里、銭函など対岸に海が見えるところに行って、蜃気楼観察を楽しんで」と呼びかけている。
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