日本銀行札幌支店(宇平直史支店長)は、6月9日に、北海道と後志地区に関する「金融経済概況」を発表するとともに、特別調査 「小樽経済の現状とその将来性について」 公表し、「小樽経
済は最悪の水準」にあるとレポートしている。
6月の「金融経済概況」は、「北海道と後志地区の景気は、低迷している。」とした。 「北海道」(PDF) 「後志地区」(PDF)
さらに、特別調査 「小樽経済の現状とその将来性について」では、小樽市にスポットをあて、その現状と将来性について整理している。日銀札幌支店の特別調査が、一地方都市に絞ってレポートすることは、極めて珍しいことで、それだけ小樽経済の深刻度が看過できない状況になっていることを示していると言える。
同特別調査は、「小樽経済の現状は、①個人消費、観光、雇用環境等が厳しい状況にあり、全体では低迷している状況にある。その水準は、日本銀行小樽支店廃止後(2002年以降)で最悪となっている。②過去5年間の小樽経済の規模の縮小度合いを北海道全体と比較しても、小樽経済の弱さが目立っている。③こうした経済の厳しい現状を踏まえ、小樽市の人口は、足もと減少傾向を辿り、北海道全体よりも高齢化がより急速なペースで進んでいる姿となっている」と3点の特徴をあげて分析している。
さらに、「こうした厳しい状況の中で、札幌圏近郊に位置していることは、他の地方都市にはない特徴であり、それを映じた小樽市ならではの動きもみられている。そのような小樽市独自の動きのうち、(1)札幌近郊都市としての強みを活かしきれていない事例、(2)札幌近郊都市としての強みが活かされている事例をそれぞれ一つ取り上げ、ポイントを整理」している。
そして、「小樽市が、現状、札幌圏近郊に位置する都市としての強みを発揮しているのが観光。これは、小樽市が、他の新興都市にはない、歴史ある地方都市としてのメリットを活かせる部分であり、観光を中核に小樽独自の経済モデルを構築していくことは十分可能である」と指摘。
まとめとして、「小樽市の現状の観光の強みを改めて整理すれば、「札幌等在住の観光目的客が多数訪れること」であり、彼らを如何にして小樽経済に上手く取り込んでいくかが今後の小樽経済の発展を考える鍵となる。その具体的な方策としては、札幌等在住の観光目的客に対し、①彼らの滞在時間をより長くすること(=観光店舗の営業時間の延長、公共交通機関の最終便の時間繰り下げ、駐車場の充実等)、②彼らが欲しいサービス・モノを提供すること、③彼らの「リピータ率を引き上げる」こと(=飲食や観光施設などのソフト面の充実、イベントの強化等、何度訪れても飽きさせない工夫をする)、の3点が挙げられる」と提言している。
このレポートは、低迷する小樽経済への今後の脱出策へのヒントが数多く含まれており、「観光都市宣言」をした小樽市にとっても参考になる。
◎特別調査「小樽経済の現状とその将来性について」(PDF)
◎日銀札幌支店HP