起債めぐり激突 住民訴訟の証人尋問 長氏が"一刀両断"


 山田勝麿小樽市長が、選挙公約として推し進めていた市内築港地区での豪華市立病院建設計画で、基本設計を中断し、業務委託契約を解約して、 2,581万円を設計会社に支払ったのは違法・不当な公金支出であるとして、小樽市稲穂在住の一市民・松浦光紀(64)さんが、市に返還を求めている住民訴訟の損害賠償履行請求事件第10回口頭弁論が、5月13日(木)13:30から、札幌地方裁判所第3部合議係(橋詰均裁判長)の802号法廷で開かれた。
 この日は、証人尋問が行われ、約40人の傍聴人を前に、原告、被告双方が申請していた2証人が証言台に立った。市は、新病院建設の事業費に160億円もの巨額な起債(病院事業債)を見込んでいたが、果たして、国の同意、道の許可が得られるかが争点となっていた。
syouninjinmon.jpg 最初に、原告側の証人の長隆氏が、宣誓の後、主尋問が行われた。この主尋問には、原告の松浦さんが委任した、札幌の島田度弁護士(たかさき法律事務所)が立った。
 長氏は、島田弁護士の質問に「多額の不良債務を抱え、資金不足比率が53.5%と極めて高い小樽市のずば抜けて悪い数値状況で、国(総務省)が起債を認めることは、全くあり得ません」と断言。さらに、「資金不足比率が10%を超えた場合に、病院の新築、改修工事等の大規模な起債が認められた例はありますか?」との問いに、「自分がかかわった限り、全くありません」と明言。国の起債の同意基準がいかに厳しいかを、大阪の泉大津市立病院や宮城県石巻市の公立深谷病院などの具体例で示した。
 「泉大津病院では、不良債務があり、人件費の削減やリストラなど懸命の努力で、あと2億円で資金不足比率10%を下回るまでになったが、その2億円を解消してから来いと、起債は認められなかった。深谷病院は、平成15年の三陸沖地震で、病棟に被害が出て、改修工事の必要性に迫られ、起債申請を平成18年にしたが、資金不足比率は10%台で、緊急事態だったのに起債は認められなかった」と述べた。
 また、小樽市が基本設計中断の理由に、公立病院ガイドラインの影響をあげていることに対し、座長としてこのガイドライン作成に携わった経験から「ガイドラインは、地域医療の崩壊を防ぐために、公民の医療体制の再編ネットワーク化を目的にしたもので、起債には全く関係ない。すりかえて関係あるとそう主張しているのは、小樽市だけだ」と明確に指摘した。
 小休憩の後、被告側の証人の吉川勝久・小樽市病院局経営管理部長の証言に移った。伊藤隆道弁護士の主尋問で、吉川氏は、市の新病院計画と起債の手続きなどについて、陳述書に従い淡々と述べた。
 起債申請を、「大きな起債なので、一次申請と思っていたが、建設地分を19年12月の二次の追加申請で行うこととした。しかし、平成19年11月に見送ったのは、19年の病院収支計画が下回ることが予想に反し落ちた。下ぶれ分は、一般会計からの繰り入れを余儀なくされた。一般会計も予想より交付税が落ちた。国の方でガイドラインを作成し、10月に素案が出ていた。素案が義務付けになるので、改革プランを作成しなければならない。再編ネットワークも作れとあり、交付税減額の財政的ペナルティなどのそういったものも見なければと、一時的に中断した」とした。
 しかし、「道との協議で基本設計書が必要だった」と事前協議で道から基本設計を求められたとの発言に、傍聴人からも注目が集まっていた。
 吉川氏の証言に対して、3人の裁判官もそれぞれ疑問点を質し、基本設計と起債との時系列的な整合性や高い建設費の坪単価などに注目していた。
 なお、橋詰裁判長は、あと2回の口頭弁論の期日指定をすることを明らかにした。次回は、6月17日(木)13:15から701号法廷でと指定した。山田市長の証人尋問は行わないことも決定した。
 この日の証人尋問に原告の松浦さんは、「長さんが超多忙の中、わざわざ証言するために、札幌地裁まで足を運んでいただき、本当に感謝しています。長さんの経験に裏付けられた証言で、これまでの被告の主張が何の根拠もないことが明白になったと思う。今回は、島田弁護士さんの力添えでここまでこれたので、感謝しております。ゴールまであとわずかなので、最後まで頑張って行きたい」と話した。
 なお、長氏は閉廷後「今回の証人尋問に応じたのは、原告の松浦さんが、一人で闘ってきた志に打たれたからです。小樽市は、懲りずに、場所を変えて、また豪華病院を建設するための基本設計を再開すると広報5月号で発表しているが、とんでもないことだ。11年間、公立病院を見てきたが、小樽は、特別例外的に悪い。一日も速く、努力する医師、看護師が報われる病院にしなければならない。
 経営形態の変更も出来ない、退職引当金も全然積んでいない、ざぶざぶの税金投入でしか保てない今の状況では、国が過疎債を認めることはあり得ません。6月議会で基本設計の予算措置をするようだが、総務省が過疎債に同意することはありえないので、新病院の建設再開が出来ないことは明白だ。不良債務を解消し、一般会計からの繰出しを止めることこそが先決だ。市は潰せないと言っているが、恐らく、医師・看護師に見捨てられ,銚子市立病院と同じになるのではないか。5年先には、今の市長はいない。小樽は、市内の病院の再編統合が必要で、市が公立病院を経営するのは、不適格だと思う。
 証人尋問で、吉川証人が道との事前協議には、基本設計が条件で、基本設計をしていなければ事前協議に入れないと言うのは、重大なミスだと思う。事前協議に、高額の基本設計が必要だということが全国に波及することは問題だ」と語った。
 小樽市立2病院の新建設計画の虚構
 小樽新病院建築問題