市議会総務常任委がポプラ伐採を容認 反対陳情を不採択 


iken.jpg 小樽市議会第3回定例会の総務常任委員会(前田清貴委員長)が、9月23日(水)13:00から、市役所別館第2委員会室で開かれ、小樽文学館・美術館のポプラ並木伐採の中止を求める市民からの陳情についても審議し、自民・公明・ 民主市民の与党が陳情を不採択とし、ポプラ伐採を容認した。
 総務常任委員会の冒頭、「ポプラ並木を守る会」の松浦光紀代表が、陳情の趣旨を説明する意見陳述を行った。こちら
 同常任委は、自民党3(横田久俊・山田雅敏・久末恵子)・公明党1(斉藤陽一良)・民主市民連合1(佐々木勝利)・共産党1(菊地葉子) の6委員と、前田清貴委員長の7人で構成されている。
 傍聴席には、ポプラ伐採反対運動を展開している守る会の市民たちが詰め掛け、その質疑の行方に注目していた。
 質疑の概要は以下の通り。
kikuti.jpg 共産党の菊地葉子議員は、「今回の陳情書には、樹木医の方の診断書が添付されていた。ポプラについては健康樹木との判断ですが、教育委員会の見解は」
 渡辺禎子・美術館副館長は、「樹木医の調査結果も確認させて頂きました。教育委員会としては、結果については真摯に受け止めてその通りだと受け止めている」
 「それではあえて倒木の危険はないという認識か」(菊地議員)
watanabe.jpg 「調査結果等を確認した中では、今現在、健康木で倒れる危険性はないと感じております。しかし、昭和60年の台風で5本のうち1本が倒れ、また、残りの4本については、台風の時に斜めになったという証言も、最近、近間で見ていた人から聞いた。今後も強風で倒れないという保証はない。万が一倒れた場合、今後整備する広場は、たくさんの市民や観光客にいらして頂きたいという形で整備するので、そういった場所から考えると、人や車に被害が出てからでは遅いということで、伐りたくて伐るわけではなく、止むなく伐らしてもらう」(渡辺副館長)
 「倒木の危険について心配だということで伐ると思うが、そうすると、先ほど陳情者が述べていたが、小樽市史の中にも出てくるが、市民会館を建設 された時の安達市長さんが、こういう大木になるには100年かかるから伐るなと言った節があるが、市民会館のポプラは文学館のところよりも樹齢が経っているが、市民会館のポプラについてのお考えは」(菊地議員)
aoki.jpg 市教育委員会・青木良英次長は、「市民会館のポプラについて、かつて市の広報でも掲載したが、現在の文学館・美術館のポプラとの一番大きな違い は、市民会館のポプラは公園用地にそのほかの木と立っていて、また、市民会館が建てられたのは47年前、50年近く前の建設で、その当時、現在のポプラよりは大きくなかった。半世紀前の逸話ということでの広報の掲載ですから、その後の社会情勢も変わっている」
 「仮にポプラを残すとした場合については、安全性、管理についての計画、点検なりが求められるが、ポプラを残したコンセプトについては、計画に至るまで検討されたのか」(菊地議員)
 「市役所関係部局、建設部や観光などと何度も打ち合わせしました。その中で課題を整理して、樹木医の調査も必要ではとの話しもあったが、市内に2人の樹木医がいるが、そこまではいかなかった。最終的に、議論の中で、安全が第一だと、結論というか、その方向性が早い段階で見えていたので、 ポプラを残して寿命を延ばして植樹したままの状態は考え難かった」(渡辺副館長)
oono.jpg 大野博幸教育部長は、「今ある4本のポプラを、一定、手を加えれば長生きできるという議論ではなく、昭和60年に一本倒れているので、危険性が あるかないかの話し。異常気象と言われる中で、平成16年のような台風が来ると想定出来るし、平成14年、北大で、中央通のポプラの大議論があっ たという報告書も読んだ。平成16年の大風の時に道内の全部の市町村で、街路樹と公園樹木で、どういった木が倒れやすいのかという研究データが作 られて発表されているが、ポプラの倒れた率が高い、2番目はニセアカシアで、そういうデータを見ると、このままポプラを残す判断にはならなかっ た。最初から全部の資料を持ってということではないが、議会の中では新年度予算の時に市長がポプラを伐採すると答弁させてもらっているが、植物図 鑑で性質や色々なデータを調べながら決断の方向性を出した」
 「市民の要望が出てきた時と、北大の時と何が違うか。北大の時は危険だと樹木医が診断し、伐ったら穴が開いていた。小樽市で起こっているのは ちょっと違う。なにしろ、今回の診断では健康だと言っているし、市民の動きがあった時に入札をかけているが、署名を集め陳情が出てくるという動き が見えている中、議会での結論がどうなるか見ながら進めることは出来なかったのか」(菊地議員)
 「樹木医の結果について違うとかそういう認識ではない。一定の手を加えれば元気に生きてく木という診断で、そういう認識。専門家の診断ですから。ただ、台風には弱い。市内でも実証されている。道の緑化樹木センターの調査でもそうなっている。あそこの木については、整備する時に出来るだけ危険性を除去していくという考え方。市内には街路樹がたくさんあり、風速80mだと全部倒れると思う。だからって全部倒すということにはならない。必要な中で出来るだけ危険性を除去するかについて検討した結果、伐採することにした」(大野教育部長)
 「市民から残せという声があり、議会の陳情に上がってきそうだということを分かっていながら、整備にかかる入札をやったということについては、 木を伐る結果に至っても、向き合う方向性が違うのではないか。向き合って結論を出すことが欠如していたのではないか」(菊地議員)
 「4本のポプラを倒す倒さないかで始まった議論ではなく、あのスペースをどうするかということで議会の質疑でも考え方をお示しした。新年度で予算化し、第2回定例会で補正し、仕事の流れの中でしているわけで、端的に申し上げて、この時期に陳情が出てきたので、事業を中止するという考え方 はない」(大野部長)
yamada.jpg 自民党の山田雅敏議員は、「並木を残すと計画にどのような影響が出るのか」
 「5本あったポプラの木が、昭和60年に1本倒れ、ほかの4本も風に煽られ傾いていた。多くの方々が行き来する場所で、何かあったら管理責任を 問われるので、安全性を第一に考え、4本を伐採する考えに至りました」(渡辺副館長)
 「たとえば、成長すると40mになるポプラではなく、高さの低いポプラもあるが、そういうのもいいかなと個人的には思った。ポプラはシンボル的 なものととらえている。4本のポプラを伐採する形で計画が出ているが、整備の方を優先するというか、憩いの場とする整備のあり方を市民に周知した 方が良いと思うが」(山田議員)
 「ちょうど10月1日付の広報おたるについて、整備計画の全体像を周知する。広場についても理解が得られるように説明させて頂いているので、広 報を活用して頂きたい」(渡辺副館長)
 「今回示された分庁舎の改装計画は、市民の憩い、集いの場として整備されるのであれば、粛々と進めていただければと思っている」(山田議員)
yokota.jpg 自民党の横田久俊議員は、「整備方針が示されていたが、それをしっかりやっていただくことで予算を通した。私は稲穂東8丁目、今の1丁目で生ま れ、旧日銀 や色内駅の踏み切りとかがあり、ちっちゃい頃からポプラを見てきた。残してもらった方がノスタルジックな街として良いのかもしれないが、危険性の問題もそ うですし、計画の進捗のこ とも含めると、中々止むを得ない部分もあると思う」
 公明党の斉藤陽一良議員は、「1本倒れたと言われているが、具体的な状況について、いつ何年何月に倒れたのか、その時の天候、風速、どの位置か ら どの方向に倒れたのか。その倒れた時の被害。腐っている部分があったのか、虫に侵されていたのか」
 「1本のポプラが倒れたのは、昭和60年の9月1日に小樽を通過した台風の時に倒れた。正確には、2日の早朝に倒れているのが発見さ れた。倒 れたポプラは、5本並んでいるうちの手宮寄りのポプラで、駐車場に面した方に倒れた。玄関のすぐそばに来たが、夜間ということもあり車の被害等は なかった。天候は、 台風の通過した日で、台風13号ですが、風台風というより大雨をもたらした台風で、一日の降水量が112mm、一時間最大の降水量が31.5mm で非常に 雨の強い台風だった。最大風速が北の風6.7m、最大瞬間風速は北西の風12.7mという状況だった。雨の台風で、同じ9月で、最大風速の 6.7mを超え る日が4日間、12.7mを超えた日が8日間あり、9月1日の風が他の日と比べて強いということではなかった。当時の経済部の職員が朝連絡を受け て見た が、木の病虫害などは記憶にない、意識してみていなかったので記憶にないという状況」(青木次長)
saito.jpg 「風向きが北、北西の風で、一番風当たりが強い部分だった。特段強い風でなくても 風向きによって倒れてしまうという、見た目で特別倒れやすいのではなくても倒れてしまったと考えられる。倒れる前の時点で管理者として外見的に危険な状況 が把握されていたのか。専門から見れば判断出来たが、専門家じゃないから把握出来ず見逃したのか、兆候があったのか」(斉藤議員)
 「当時管理していたものから聞いたが、特段注意を払って観察していなかったが、通常管理するにはポプラについて危険であるとか、兆候 はなかった。外見から見て倒木を感じさせる兆候はなかった」(青木次長)
 「外見的に倒木しそうだということがなくても、突然倒れてしまうことがあるという風に考えて良いか」(斉藤議員)
 「様々な事例があるが、北大の中央通りのポプラ並木も伐採した経過があるが、報告書に記載されている内容ですが、その中にあるポプ ラ、青々と 茂っていたポプラが風のない日に倒れてしまったという記載がある。外見上、倒れるかどうか兆候がなくても倒れたということが報告されている」(青木次長)
 「樹木医が倒木の危険がないと診断していた状態の中で、何の兆候も無く倒れた場合、樹木医が蓋然性は高くないという意味での危険はな いという 診断だから考慮しないといけないが、倒木の危険がないという診断をしている中で、突然倒れた時の管理者の責任は。強風の下で不可抗力で倒れた時、 通行人、 通行車両に被害をもたらした場合はどうなるか」(斉藤議員)
 「台風で自然災害なのかどうなのかは一つの問題になる。自然災害は管理責任はないのが定説。一方で、管理上、瑕疵があったのかが 争点になる。台風は来たけど、きちんとした管理をしていれば倒れなかった。管理をしていなかったからこういう風になったのではと、やはり最高裁まで行くという判断。丈夫な木が 突然倒れた場合に、丈夫な木は倒れないが、倒れた場合には何らかの原因があり、その中で管理上の瑕疵があったのかが問題になる。昭和60年の時に1本 倒れてい て、また倒れて市民の方がケガしては困る、その思いが一番目にある」(大野教育部長)
sasaki.jpg 民主市民連合の佐々木勝利議員は、「防災という観点で議論を組み立てたと思います。私の経験、近所にはアカシアがあったり、ポプラがあって、雨 の 関係で根が浅いことが致命傷だと思っている。これが倒れる大きな原因と認識している。昭和60年の時に一本倒れたが、まだポプラが立っているということは、もともと記念樹として立てられたからということなのか」
 「何かを記念するために植えられたものではなく、もともと貯金局が植えたもので、それを引き継いだので、市の認識としては記念樹という認識はない」(大野部長)
 「あそこを伐ったままではなく、代わりになるものを植栽すると理解するが」(佐々木議員)
 「代替樹をバランス良く植え、手宮線との一体化を持たせるように考えている。旧手宮線との一体的な広場をつくっていきたい」(渡辺副館長)
 「陳情について色々議論してきたが、あそこの場所は観光客が来るので目玉になる場所になると思うので、作って喜ばれる場所であって 欲しい。これまでの経過を踏まえてしっかりやって欲しい」(佐々木議員)と述べた。
 質疑終了後の討論では、斉藤議員が、「全体で5本あったポプラのうち1本が現実に倒木した事実があり、木の健康、不健康に関わらず、その木の立っている位置、周辺の土地利用や交通の状況、樹齢を総合的に考慮すれば、倒木について蓋然性は高くないにしても、万が一という倒木時における人的、物的損害 を未然に 防ぐ観点から現時点において伐採することはあながち不合理と言えない。むしろ絶対に倒れないという保障がない以上、伐採は止むを得ない」と、陳情を不採択 とする立場を表明。
 菊地議員は、「小樽市の歴史を語るにかかせない手宮線との一体感をもたせる整備であるので、ポプラも風景の一部になっている、こういった財産を残 し、安全対策を施していく方策もあるのではないか。市民の陳情に対して歩み寄る姿勢もあったのではないか」と陳情の採択を主張。
saiketu.jpg ポプラ並木伐採に反対する陳情については、共産党を除く、自民・公明・民主市民の与党会派によって不採択となった。共産党は整備計画に賛成していたが、今回、市民の陳情を受け、ポプラ伐採について反対の立場を取った。
 これに対し、「ポプラ並木を守る会」の松浦代表は、「風が強いから倒れるのは危険で、強風で1本倒れたわけではないことが分かった。市が示した 昭和60年当時の状況は検証しないといけないと思う。不採択した市議会議員は、残すためにどうするかという議論ではなく、伐るためにどうするかと話していた と感じる。今後も樹木が健康だということをアピールして署名活動を続けていきたい。納得のいく説明がたなく、ただ一本倒れたから伐るというのでは、動物の赤ちゃんが5匹生まれて1匹死んだからほかの4匹も殺すという議論。残すためにはどうしたら良いかの議論ではなく、全く噛み合わない。公明党の斉藤議員が50~60年が老木だと言ったが、樹木医からするとこれは折り返して、北大でも100年の樹木がある。陳情が委員会で不採択となったので、早速、対応を協議したい」と述べた。
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