住民訴訟の札幌地裁判決 市長・市議会の不当性を指摘


 札幌地方裁判所(民事第3部、橋詰均裁判長、宮崎謙・木口麻衣裁判官)で争われていた住民訴訟の「損害賠償履行請求事件」の判決言渡が11月11日(木) にあり、原告の請求棄却とされたが、判決文を見ると、裁判所が、新病院建設事業を進めた市長や市議会に対し、その不当性などに言及するという異例の指摘がなされている。
 裁判所は、「住民訴訟の制度は、違法な財務会計上の行為又はその結果を是正しようとする制度であり、裁判所に、地方公共団体の行政計画の進め方を吟味させ、その当否を判定させようという制度ではない」とし、「裁判所が行政計画やそのための予算執行の進め方の良し悪しは、地方自治の問題として、市議会での議事、市監査委員の監査、あるいは市政選挙を通じて議論がされるべき事柄である」とした。
 しかし、「本件健全化計画は、長く先送りされてきた44億円の累積赤字を短期間で解消しようとする余り、実現が難しい内容であったことは、山田が、本件契約の締結に当たり、当然考慮しなければならなかった事情である」と指摘し、「本件健全化計画の実現は困難であったことや平成19年度において起債許可が得られる見込みがなかったとの原告の指摘は、結果としては正しかったし、前記認定の事実経過に照らしてみるに、冷静に考えれば平成19年3月時点で山田もそういう予測の下に行動すべきでなかったかという疑問が生じるのであり、原告の指摘は、本件事業の進め方を巡る市議会や市長の判断の不当性を問う議論として納得できるものである」と、原告住民の主張の正しさを認定するとともに、市長や市議会の判断の不当性に言及する異例の指摘がなされている。
 「住民訴訟において問題とすべきは財務会計上の行為の当・不当ではなく、適法・違法である。原告の指摘は、本件契約締結行為の財務会計上の違法を問う議論としては不足しているといわざるをえないのである」として、原告請求が棄却されたものとなっている。
 いわば、本住民訴訟では、試合結果の勝敗は辛うじて被告側にあがったが、試合内容は原告側に分があったとの判定となっている。本訴訟の結果は、被告市長の主張を認めたわけではなく、「具体的な財務会計法規に違反する違法な点があることの事実は証拠上うかがえない」としたものであり、むしろ原告住民の指摘は、「結果として正しかった」、「市議会や市長の判断の不当性を問う議論として納得できるものである」と言い切る異例の指摘がなされており、弁論内容では原告に軍配をあげた格好となっている。
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