「モクズガニを見たことがありますか?」 博物館構内で発見


 モクズガニは、小樽ではごく普通に見られる蟹で、勝納川、朝里川、蘭島川などにも生息している。ところがなんと、海でも川でもない小樽市総合博物館(手宮)構内の機関庫の雨水桝で発見された。台風の影響で大雨が降った翌日の9月4日(日)、転車台の排水作業をしている時に、機関士が見つけた。現在、総合博物館本館・リファンレスルームで展示している。
 モクズガニは、海で生まれ、数ヶ月間海中で浮遊生活をし川をのぼり、その後3〜5年かけて成体になる。秋に海に降り、翌年の初夏まで交尾・産卵を繰り返し一生を終える。
 付近の図面を調べた、小樽市総合博物館山本亜生学芸員は、「このモクズガニは、甲幅7cmでメス。小樽の海で生まれ手宮川を遡上し、博物館裏山に住み成体になった。秋に海に降りる習性のため海へ行く途中だったのではないだろうか?」と推測する。
 もしも雨水桝を開けなければ、発見できず死んでしまったのでは?と聞くと、「雨水桝は出口があり、たとえ発見されなくても脱出できる。ここで今までにモクズガニを見たことがないため大丈夫」と言う。
 甲幅7〜8cmほどのモクズガニ。鋏脚(きょうきゃく:はさみのような脚)にふさふさと生えた毛が特徴。はさまれるとけっこうな力があるので要注意。日本全国に分布し、九州、四国地方中心に日本各地で食用とされる。
 山本学芸員は、「手宮川を遡上し、排水設備を通り道にして生活している事は、大変興味深い事例。19日まで展示しているが、その後の行先はまだ考えていない。手宮川河口付近に放すのが良いのかもしれない。とても食べる気持ちにはなれない」と話している。
 展示水槽には空気を入れ、落ち葉を餌に、大変元気に生活している様子。この機会に、博物館構内の雨水桝で発見されたモクズガニを、見に行ってみてはいかが。展示は19日(月)まで。