小樽産蜂蜜の考察 ミュージアム・ラウンジ「小樽の養蜂業」


youhou1.jpg 小樽市総合博物館(手宮1)は、9月25日(日)10:30から、本館・研修室で、ミュージアム・ラウンジ「小樽の養蜂業」が行われた。同館の佐々木美香指導員が講師となって、小樽で行われている養蜂業の紹介と、ハチミツができる仕組みについて考察した。
 佐々木講師の「小樽の養蜂業」に関する話は、自らの養蜂園の調査・記録をもとにしたものだけに興味が尽きない。
 「ハチとの出会いは、2009年の雪あかりのイベントで、蜜蝋からキャンドルを作る講座を担当した時、ドイツ産の蜜蝋を使用したが、小樽でも蜜蝋がないのだろうか?と探したのがきっかけ。その後、小樽の養蜂業『岩崎みつばち園』と出会う。
 日本古来の養蜂については、日本書記に、643年『百済の太子余豊が、蜜蜂の房四枚を以て、三輪山に放ち養う。しかれどもついに蕃息らず』と、奈良の三輪山に4枚ほど置いて試みたが失敗したと記してある。平安時代には、宮中へ蜂蜜を献上し、江戸時代には、養蜂が本格化した。明治10年、セイヨウミツバチが日本に導入された。ハチ目ミツバチ科ミツバチ属。セイヨウミツバチ(帰化種)とニホンミツバチ(日本在来種)がいるが、北海道ではほとんどがセイヨウミツバチ。
 小樽養蜂業『岩崎みつばち園』が始まったのは40年前。東京へ修学旅行へ行った時に道具を買い、それから始めたと言う。塩谷伍助沢に養蜂箱30個を設置、長橋・祝津・余市・古平など200箱を設置している。白っぽい服を着て、頭にネットをかぶり、ハチの飛ぶすごい音の中で調査した。ハチは一生懸命に作業をしているので、人を刺す事はない。
 北海道のセイヨウミツバチは、6月になると、ニセアカシアの蜜をとって巣箱に持ち帰る。巣箱から4km離れた蜜を集めることができる。ヒグマ対策として電線を張り、スズメバチも天敵だ。蜜源植物のトチノキ・ニセアカシア・シナノキは白っぽい蜜が取れ、イタドリは、黒砂糖のようで濃厚な味がする。
 イチゴ・サクランボ・メロン・かぼちゃ・カンロなどで受粉作業のため、農家へ養蜂箱ごと貸し出す事もある。蜂蜜の取り出し方は、巣板を取り出し、麻袋を燃やした噴煙機から煙を吹きかけるとハチがおとなしくなる。巣板をゆするとハチが落ち、その巣板を遠心分離機にかけ蜂蜜が流れ落ちる。幼虫、ハチの破片が入っているため、濾して缶に溜める。今年は、24kg入りの缶が200個採れた。
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 巣箱は、冬に向けていくつかは本州へ、残りは越冬。巣箱に雪がすっぽりと積り、ハチは振動で熱を出し、巣箱の中は、5℃以下にはならないようになっている。ハチは夏場は、2ヶ月生き、越冬するハチは、女王蜂が春に産卵すると寿命を迎える。
 ミツバチの生産物として、蜂蜜の他に、蜜蝋・ローヤルゼリー・プロポリスがある。蜜蝋は、巣を作る材料でハチの体内で作られる。巣を水と一緒に火にかけてしぼり出す。ロウソクとして使用すると、すすが出ず、蜂蜜の香りがする。いろいろな形にも成形しやすい利点がある。ローヤルゼリーは、花粉から出来ており女王蜂になる幼虫や成虫になった女王蜂に与えられる。プロポリスは、植物から集めた樹液などをハチの体内で変化させたもので、巣の補強に使われている。
 日本では、国産の蜂蜜だけでは賄われないため、中国などからの輸入に頼っている。最近では、大都会での養蜂が注目され、道庁の屋上でも養蜂箱が置かれ”Hokkaido Bee Project(さっぱち)”が、蜂蜜を販売し注目されている」と話した。
 会場では、養蜂箱や巣板、ハチの巣、ミツバチ、蜂蜜などが展示され、参加者は、手にとって観察し、興味を示していた。ハチにまつわる疑問にも、丁寧に答えていた。
 参加者の市内の女性は、「日頃ハチに興味があり、蜂蜜が好きで、天然ものを食べている。ハチの話ということで楽しみに参加した。大変おもしろかった」と語っていた。