ギャラリートーク「すごろくを読んでみる」 総合博物館運河館


 小樽市総合博物館運河館は、10月16日(日)、ギャラリートーク「すごろくを読んでみる」を開催した。
 石川直章学芸員が講師を務めた。以下は、講師が語ったすごろくトークの概要。
sugoroku.jpg 「今年の夏に、稲穂女子尋常高等小学校の教員経験のある市民が、明治40年から昭和12年までのすごろく22枚を寄贈した。当時の雑誌の付録についていたものだが、丁寧に保管された状態だった。
 すごろくは、インドで生まれ、室町時代には、絵すごろくで仏様が書かれていて、功徳を積めば浄土へ行けるという事をゲームに使用していた。江戸時代では、『人間一生道中双六』など、江戸中期から大流行。生まれてから死ぬまでの人生の教訓を読みながら進む。『娘庭訓出世双六』は、当時の娘が楽しめるような事が書かれ、読み物として使えた。
 今回、運河館では、明治40年に博文館が出した『新案双六当世二筋道』を複製し、サイコロとコマで実際に遊べるように展示している。このすごろくを描いた人は、鏑木清方。明治の女性を描いた有名な画家で、当時30歳。修行として描いたものだった。
 明治末には女子の就学率も向上し、人生の選択肢に公務員や看護婦、職業婦人が生まれ始めた時期。上がり直前の日比谷公園は、話題のスポットだった。
 明治41年 實業少年団の付録で『實業少年出世双六』は、桐谷洗鱗が絵を描き、この画家は、後に仏画で有名になる。ふりだしは奉公、サイコロの目の数に進み、辛抱、しんぼうのないこまはたちませぬや、買い食い、だらくのはじまりなどと書かれている。高等小学校後は、85パーセントが社会に出るため、子どもであっても世間に後れないようにと、モラルが書かれている。
 大正から昭和にかけては、富裕階級は実際に渡航できるようになり、婦人世界雑誌の付録『世界婦人風俗双六』は、明石精一が描き、大正4年には、少女の友の付録『日本名所双六』を川端龍氏が描き、有名な観光地をめぐる内容。
 大正15年の少年倶楽部(講談社)付録『日本男児遠征双六』は、松野奏風が描き、のちに能画家になる。少年倶楽部は、読者層が中学生くらいまでで、のらくろを連載したり、ペーパークラフトを最初に付録につけた雑誌である。付録であるすごろくが多い中、販売用に作られた、第一徴兵保険株式会社の『徴兵保険双六』もある。
 昭和10年小樽の児童向け教育出版社『小さき市民』」発行の雑誌付録『小さき市民日本名所見物双六』がある。
 すごろくから、時代の背景が読み取れ、当時の子ども達は楽しみながら、生き方の教訓を知り、人生の目標を教わる。また、日本の代表的画家の修行時代に描かれた絵なども見る事ができる」と、様々なすごろくについて語った。
 総合博物館運河館では、小さな企画展「すごろく付録に見るこどもの世界」を、12月2日(金)まで開催している。