小樽文学館叢書2 亀井志乃著「緑人社の青春」発行


kameishino.jpg 市立小樽文学館支援団体「小樽文學舎」(高橋昭三会長)では、小樽文学館叢書2として、亀井志乃著「緑人社の青春」を制作、発行した。12月23日(金)から小樽文学館内小樽文學舎で販売する。小樽文学館叢書1は、昭和58年今から33年前に、小田重子著「小田観蛍の想出」を発行している。
 著者の亀井氏は、昭和38年北海道生まれ 北海道大学大学院文学研究科博士課程修了・文学博士。研究対象は、日本近代文学、近代日本における芸術思想の変遷。
 「緑人社の青春」ー早川三代治宛の木田金次郎、高田紅果書簡で綴る大正芸術運動の奇跡ーは、800ページの内容の濃いものとなっている。亀井さんは、「大正時代では常識的な事でも、今では知られていない事を、正確に解説をつけているうちに厚くなった」と話した。
 木田金次郎を中心に北海道後志地方での小樽文学及び芸術青年達との知られざる交流をテーマとして、大正10年〜14年頃の早川三代治が留学中に受け取った手紙のうち、木田金次郎と高田紅果に関する書簡を中心に編集した。
 緑人社とは、木田、高田によって結成されたアマチュア青年画家のグループ。高田、早川らが結成した小樽の文化団体(啓明会)がその主な母体となる。
 この本の制作にあたり、新しく発見された点として、「木田は、有島武郎の教えをひたすら胸に刻んで画業に邁進しただけの人物ではなく、大正10年頃から東京の展覧会で接した<表現主義>の作品の表現及び技法に強烈に心惹かれたと、従来の説を覆すものであること。
 絵画芸術において、木田が目指した方向と、有島が木田に目指させたかった方向が、必ずしも一致していなかった。
 文学方面では、青年歌人だった高田紅果は、従来、石川啄木を尊敬していた人物として知られていたが、大正6年以降は、有島の思想に傾倒し、晩年まで有島に対する敬意は変わらなかった。
 啓明会、緑人社、白水会等の巻き起こした文化・芸術活動は、日本の中の<後志圏>から発信された芸術運動であるなどが分った」と、亀井氏は解説した。
 木田は、知的で叙情的、文才があり、高田は、天真爛漫、小樽で熱心な活動をしていた。みんな個性に応じて生き生きとして情熱がある。多種多様な関心から読んでも、興味深い一冊となっている。
 「緑人社の青春」2,800円(税込) 亀井志乃著 問合せ0134−32−2388 文学館内小樽文學舎。