小樽を舞台にした『切り絵文学展』開催 小樽文学館


kirie1.jpg 市立小樽文学館(色内1)では、小樽を舞台にした作品の一部を切り絵にした企画展「高橋悦郎・切り絵文学展」が、4月7日(土)から5月27日(日)までの9:30〜17:00(休館:月曜・祝日の翌日振替)まで開かれている。
 切り絵作家・高橋悦郎氏は、40年前から切り絵を始め、美術の教師に切り絵を教わり、あとは独学で学び、2006年に教師を退職してから、熱心に取り組むようになる。2009年に文学館で雪あかりの路の時期に「小樽坂の街切り絵展」を開き、今回、文学館では2回目の開催となる。
 小樽の名所や産業、歴史、文学者を題材とし、同氏が絵札を切り絵にし、教え子の高田幸枝さんが読み札の文章を考えた『小樽切り絵カルタ』の作者でもあり、好評を得ている。
 今回の切り絵展は、小樽を舞台にしている本の中からの一節を抜き出し、文章に合った挿絵の切り絵を添え、作品に仕上げている。3年前から構想を練り、2年前から集中的に作り上げた34点を展示している。
kirie2.jpg 最初の作品は、3年前に蟹工船がブームとなり、蟹工船の一節を切り絵にしてはどうかと思い読んだが、舞台は函館だったので、1968年作品「転形期の人々」を使った。多喜二から伊藤整と繋がり、「幽鬼の街」の中の一節を使った。小樽を舞台にした本を探し、図書館通いが始まった。石原慎太郎「弟」、三浦綾子「母」、蜂谷涼「煌浪の岸」の一節が並ぶ。作品と一緒に一節を使った本も展示し、幅広いジャンルと幅広い年齢の作者の本から抜き出されている。小樽を舞台にした本が意外にも多いことに気付かされる。
 作業工程は、文章を13行くらいになるように抜き出し、紙に下書きし、トレーシングペーパーを載せ、筆ペンでなぞっていく。和紙を置いて、デザインナイフで、文字をアレンジしながら切っていく。切り絵の基本は、全てが繋がっていること、失敗しないように細心の注意を払いながら仕上げていく。文字は、それぞれに丸みを帯びていたり、角張った文字だったりと違いがあり、その器用さに感心させられる。
 1枚を完成するのに、4日で出来るものや1週間かかるものもある。完成後、持ち上げて見た時が一番満足すると言う。
 同氏は、「切り絵の魅力は、気軽に遊べ、息抜きとしての楽しみにある。版画と違い、そのままの向きで切れる所が良い。今回の作品展は、切り絵を見てもらい、小樽を舞台に書いている本がこんなにあって、これを機会にこれらの本を読んでもらいたい。小樽を舞台にしている本を見つけたら教えて欲しい」と話していた。