上位蜃気楼21回確認! 観測史上最多記録更新


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 小樽市総合博物館(手宮1)は、ミュージアムラウンジ「北海道における蜃気楼の最新情報」を、8月19日(日)、同館2階研究室で開いた。同館大鐘卓哉学芸員が講師を務め、蜃気楼に興味のある25名が参加した。
 蜃気楼は、上位蜃気楼と下位蜃気楼に分れる。「高島おばけ」は上位蜃気楼に属し、海水が冷たく上空の空気が暖かいと光の曲がる物理的な特性で現象が起こり、大変珍しく面白い蜃気楼。また、下位蜃気楼は、逃げ水や浮島現象などで、空気の温度が上冷下暖の時に起こる。
 同学芸員は、1998年上位蜃気楼を初観測し、その後、毎年のように観測している。小樽の蜃気楼と全国の蜃気楼を調査し、北海道と東北地域の蜃気楼を共有し、富山県や琵琶湖での蜃気楼情報を交換し、調査している。
 「昨年と今年の上位蜃気楼の発生状況を比較してみると、2011年は16回と観測史上最多。大規模(肉眼で判別可能)4回、中規模(双眼鏡で分る)3回、小規模(経験がないと分らない)8回、小規模より小さい1回の計16回。初観測は5月12日と例年より遅い。今年は、昨年を越える21回と記録を更新した。国内での上位蜃気楼名所は、富山湾、琵琶湖、石狩湾と3ヶ所あり、その中でも石狩湾での発生が一番多かった。大規模3回、中規模10回、小規模8回の計21回。初観測は4月21日」と説明。
 4月21日の初観測画像、28日の高島から手稲山口や、反対の銭函から高島岬、トド岩の大規模蜃気楼画像などを紹介した。また、「4月から5月初めにかけて気温が高く、上位蜃気楼が5日連発したケースが2度もあり、全国的にも例がない蜃気楼日和となった」と強調。
 何故、多く観測(年10回程度だった)されたのか?
 「気温が高い日が続き、無人観測カメラ(10分間隔)の性能が向上し、今まで観測できなかった小さな変化でも捉えることができ、回数が上がった結果となった」と言う。
 「上位蜃気楼日和とは、4月から7月の晴れて暖かく、北西方面に低気圧、東に高気圧、南よりの風が、苫小牧や千歳方面を通り暖められ、石狩湾に暖かい風が押し寄せる。風は強過ぎず、弱過ぎず、視程の良いことが条件となる。蜃気楼ウォッチャーズにより、3回の大規模蜃気楼をすべて観測し、天気予報やメーリングリスト、フェイスブックを活用し、観測に役立てている。今季は、リアルタイムに蜃気楼情報を発信できなかったことが今後の課題となる」と話した。
 これまで出現した上位蜃気楼を、北海道地図上や全国地図上にまとめ解説した。春の風物詩である高島おばけの蜃気楼も、斜里や根室、紋別では、冬に見えることがある。変形した月や太陽についても各地で観測されていると紹介。
 「2012年の上位蜃気楼は、昨年に続き、国内最多で最多記録更新。5日連続したことが2回もあった。しかし、靄が多く、見栄えがしなかった。暖かい日や雨が少なく塵が漂い、視程が悪く見えなかった。カメラの性能が良くなり、わずかな変化も蜃気楼と呼んで良いのか、今度検討する必要がある」とまとめた。
 今年2月、根室・風蓮湖では、遠くに上位蜃気楼、近くに下位蜃気楼の上下二重蜃気楼や二重下位蜃気楼などが確認され、大変珍しい現象を紹介した。
 最後に「本州に比べ、上位蜃気楼シーズンが長く観測できる。北海道は宝島。見ていて面白い。多くの人々が蜃気楼に関心を持ってもらいたい。蜃気楼日和には、是非海へ出かてもらいたい」と締め括った。