食品放射能汚染の現状と課題 食の安全を考える講演会


safetyfood1.jpg 食の安全を考える講演会が、10月30日(火)13:30〜16:00、小樽市民センター(色内2)マリンホールで開かれた。主催は、小樽市・小樽市消費者協会・小樽市食品衛生協会。
 福島の原子力発電所の事故により、放射能の影響に疑問や不安を感じる日々。放射能と食の安全について、正しい情報を理解することを目的に開かれた。
 第1部は、内閣府食品安全委員会事務局勧告広報課長・北池隆氏による「食品中の放射性物質による健康影響について」の講演から始まった。北池氏は、放射性物質について、食品健康影響評価、食品中の放射性物質の新たな基準値について説明した。
 もともとある自然放射線から受ける1人あたりの年間線量(日本人平均)は、約1.5mSv(ミリシーベルト)で、通常、食品に含まれる放射性物質を表にして説明。「放射線の健康影響に関する約3,300の文献から検討し、実際に被爆した人々の疫学的データに基づいて判断し、食品健康影響評価の結果を、平成23年10月27日に、放射線による影響が見い出されるのは、通常の一般生活で受ける放射線量を除き、生涯における追加の累積線量は、約100mSvとの結果となった。100mSv未満の健康への影響について言及することは、困難と判断した。より一層の食品の安全と安心を確保する観点から、暫定規定値で許容していた年間線量5mSvから、年間1mSvに基づく基準値に引き下げた」と説明した。
 第2部では、科学ライターの松永和紀氏が「食品の放射能汚染の現状と課題~不適切な情報にまどわされないために」と題して講演した。松永氏は、食品の安全性や生産技術、環境影響などを主に専門領域として、執筆・講演活動を続けている。食科学情報提供サイト「Foocom.net」編集長。
 safetyfood2.jpg松永氏は、「昨年の原発後、間違った情報が多く、適切に落ち着いた方が良い。情報の取り扱いを含めて”侮ること無く、恐れすぎず”」と話し、放射線のリスクはどの程度か、食品の現状は、北海道の水産物やキノコはどうか、食品の何を心配するのか、マスメディアの問題点などについて講演した。
 「放射線は、細胞中DNAを傷つけ、修復が追いつかない人が、がんになる。これまで1,000人に300人が、がんで亡くなっていたのが、放射線量100mSV程度の被爆では、305人に増えるということ。低い線量の放射線を受けた時の人体の影響より、喫煙、飲酒、塩分の取り過ぎなどの方が、がん発生リスクを上げている。放射能汚染ゼロと言われるが、ほどほどで良いのでは?ゼロにするための努力が必要か?福島を離れることになり、精神的、経済的不安が増え、他の原因で健康に影響が現れる。
 北海道の水産物の放射線量は大丈夫か?と聞かれるが、魚種と生息エリアでも違ってくる。底層の魚は、有機物をえさにしているため高い。川魚(淡水魚)は溜め易く、海水魚は溜め込みにくいと言われている。リスクを正しく捉えなければ、健康は守れない。食品のリスクは、放射性物質だけではない。微生物や他にも心配すべきことがある。食べ過ぎ、飲み過ぎ、偏食、O157やノロウイルスにも注意が必要。窒息でも年間4,000人が死亡している。メディアの不適切な報道にも注意が必要。今日の話をヒントに勉強し、他の人にも伝え、適切な情報に辿り着き、動くきっかけにしていただきたい」と締め括った。
 聴講していた市内女性は、「乳児は細胞の修復ダメージが残り、修復できないのが現実で、内部被爆は避けるべき。放射能汚染ゼロは不可能だが、ゼロを目指す気持ちは大事。移住の問題では、1日でも早く移住すべきだ。チェルノブイリ原発事故の影響を受けたベラルーシは、市民が各所で放射線量を測定できるようになっている。日本も測定できる機関がほしい」と訴えていた。