日本の伝統の音と舞 "天理大学雅楽部"小樽初公演

 日本伝統の音と舞「天理大学雅楽部 北海道公演」が、8月7日(水)、小樽市民センター(色内2)マリンホールで開催された。好評につき昼の部を追加して、14:00と18:30に公演され、市民や近郊の雅楽ファン600人が鑑賞した。
tenriUCgagaku2.jpg 天理大学雅楽部は、昭和26年に雅楽の研究、演奏技術の習得、普及を目的に創部。現在31名の部員が所属し、今回の公演には25名(女子2名)が出演した。
 昭和41年に天理で定期公演を始め、東京、大阪、名古屋、奈良などで毎年定期公演を開催。海外でも23回演奏会活動を行っている。北海道公演は40年ぶりで、小樽での公演は初めて。東大寺、薬師寺で復元された天平芸能「伎楽」は、北海道では初めて演じることとなり、注目が集まった。
 同公演会では、天理大学OBが演奏の合間に詳しい解説を行い、初心者の観客も伎楽や雅楽をより分りやすく楽しむ事ができた。
 「伎楽(ぎがく)」とは、日本の伝統演劇のひとつで、推古天皇の時代に百済の味摩之(みまし)によって中国南部の呉から伝えられた。当時日本には娯楽がなかった時代、仮面舞踏劇とも言われ、雅楽の主流となる「唐楽」より百年ほど早く伝えられた。親孝行やならず者の更生など、仲良く暮らすことの大切さを伝える内容が多い。多くの影響を周囲に与えながらも姿を消し、1,000年眠りにつく。昭和55年、東大寺の昭和大修理落慶法要で「幻の天平芸能」と言われた伎楽を、同大学雅楽部が復元演奏を務めた。昨年は、伎楽伝来1,400年を祈念して国立劇場で演じている。

 最初の演目は、伎楽「迦楼羅(かるら)」から始まった。古代インドの神話にあり、農夫が撒いた種を食る「迦楼羅」を懲らしめ、諭す。やがて「迦楼羅」は農夫を助けるという話で、ユニークな装束とコミカルな動きを楽しんだ。
 続いて、雅楽(ががく)の演奏が行われた。「雅楽」は、1,400年、中国大陸、ベトナム、ペルシャから伝わり、平安中期に今の雅楽が完成した伝統的な音楽。人間の声に近づけようと、歌うように演奏する。楽器のみの「管絃」、歌に伴奏の「謡物」、舞を伴う「舞楽」の3つのジャンルに分れる。
 「管絃(かんげん)」は、鳳笙(ほうしょう)、篳篥(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)の管楽器と、琵琶と箏の弦楽器、太鼓などの打楽器が合奏に加わり、雅楽のオーケストラと呼ばれる。「平調音取(ひょうじょうのねとり)」や黒田節の原形とも言われるポピュラーな曲「越殿楽(えてんらく)」や、軽快な曲「陪臚(ばいろ)」を演奏した。
tenriUCgagaku1.jpg 「謡物(うたいもの)」は、管楽器と打楽器の演奏に歌う「我家」を披露。婿の欲しい家があり、美味しい魚や酒がある。是非来てもらいたいという内容の歌。観客は、華やかな衣装や篳篥の響き渡る音色に魅了された。
 次に演奏した「舞楽(ぶがく)」では、左方の舞楽と右方の舞楽に分かれる。何の音も出ない独特な間がある。「高麗壱越調(こまいちこつちょう) 納曾利(なそり)」では、2匹の龍が楽しそうに遊ぶ様で、銀色のバチが龍の爪や稲妻に見えるといわれている。
 最後を飾る「太食調(たいしきちょう) 太平楽(たいへいらく)」は、相手を討ち取ろうと鎧兜をつけ太刀や矛を持ち、勇ましく4人が舞う。煌びやかな衣装や太刀振る舞いも迫力があり、観客から大きな拍手を浴びていた。
 札幌在住の女性は、「昨日の札幌での公演は都合が悪くて見られなかったので、小樽で初めて観賞した。迫力があって楽しめた」と満足した様子だった。
 今後、8月10日(土)函館地方公演、8月13日(火)旭川公演を開催。一行は、8月4日に来道し、15日まで北海道に滞在を予定している。
 天理大学雅楽部HP