独自の世界感"Wave展" 市立美術館


 小樽から新しい波を発信する「Wave(ウェーブ)12人展」が、5月20日(火)から25日(日)まで、小樽市立美術館(色内1)1階多目的・市民ギャラリーで始まった。
wave12-1.jpg 1988(昭和63)年に、競作の場を希(ねが)う13人の自由な個展の集合体として開催され、2006(平成18)年に、”新しい波”を小樽から発信しようと、「Wave(ウェーブ)」とし、今年で9回目を迎える。
 札幌・小樽在住の個性的な芸術家12名と、今年3月に亡くなった工藤英雄氏の遺作を含む64点を展示している。
 水彩・油彩・版画・金属工芸の写実的なものから抽象的なものまで、作者の個性を活かし、魅力的な作品展となっている。今回から、作品の隣に作者のコメントを掲載し、文面から作品への思いなども感じられ、来場者は作品を鑑賞する上で参考にしていた。
 前日の搬入では作家が集まり、鑑賞する人の立場に立ち、展示に力を入れていた。多目的ギャラリーでは、抽象画を中心に、市民ギャラリーでは、整った風景画があったり、野獣的な絵画だったり、メリハリがあって面白い。100号サイズなど比較的大きな作品が多く、ほとんどが新作ということもあり、見応えのある作品展となっている。
wave12-2.jpg 三宅悟氏は3点を出展し、余市川の辺(ほとり)の風景を柔らかなタッチで表現。60号を2枚合わせた大作には、りんごの季節を、木々や草の色が優しく、キタキツネが草わらに描かれている。
 葉脈をテーマに版画作品を出展するナカムラアリ氏は、以前から使用していた紙が廃盤になったことで、今回は、木版をキャンバスに刷り仕上げている。黄色やオレンジ色の作品が並び、明るい印象。壁全体を作品として見せるよう(インスタレーション)展示している。作品の表面だけではなく、側面にも卵の殻を貼り付けたり、色を塗ったり、こだわりが感じられる。見てもらいたい角度があり、作品の下にしゃがんで見上げるように鑑賞してもらいたいという。
 彫金作家の安田眞紀子氏は、元々素材が重たいもので、金属を掘る作業も大変だが、作品からは、どれも風を感じる作品となっている。
wave12-3.jpg 出展者のひとり、高野理栄子氏は、国展の版画の部で新人賞を受賞するなど、メンバーの栄誉をみんなで祝い、同時に故人を偲んだそうだ。
 ナカムラ氏は、「この場所でしか感じられない展覧会での臨場感を、是非、この季節に感じてもらいたい。会場では、作家が常駐しているので、聞きたいことなど気軽に尋ねていただきたい」と話した。
 市内40代の女性は、「小さい頃、親に連れられて絵画展を見たことがあったが、それ以後は、写真展や絵画展をたまたま通りかかった時に見る程度で、あまり足を運ぶ機会がなかった。アリさんと出会い、何度かウェーブ展に来ているが、作品だけではなく、添え書きのコメントを含めて面白い。こんな気持ちなのかと想像が掻き立てられ、毎回、面白さが増し、再発見となり、自分自身も探究心が湧いてくる」と話した。
 Wave(ウェーブ)12人展 5月20日(火)〜25日(日)10:00〜17:00
 市立小樽美術館(色内1-9-5)1階多目的・市民ギャラリー 入場無料