夏休みの日曜日とあって、朝から海水浴客らが続々と訪れる東小樽海水浴場(船浜町)で、8月3日(日)10:00から、第24回向井流水法会”游法公開”が行われた。400年にも渡る伝統ある游法の珍しい泳ぎに、海水浴客から大きな拍手が沸き起こっていた。
日本の伝承文化である「日本游法・向井流水法」の維持・存続を願い、1991(平成3)年に蘭島海水浴場で公開游法が始まり、その後、塩谷海水浴場に会場を変更し、現在の東小樽海水浴場では6回目となる。
海水浴日和となり、大勢の家族連れが海水浴を楽しむ中、向井流水会・大原一会長をはじめ、小樽支部や帯広支部、札幌から25名が参加。そのうち17歳から74歳までの16名が、向井流游法の公開演技を披露した。
向井流水法は、15世紀頃伊勢地方で生まれ、江戸幕府御船手の游泳の原形で、今日、我国に残る日本泳法の12流派のひとつ。1916(大正5)年、向井流宗家直属師範・岩本忠次郎氏が、小樽水泳講習会の講師として来樽し、多くの門弟たちを育てた。それを受け継ぎ、小樽に向井流が根付いた。1991(平成3)年9月に小樽市の無形文化財第5号に指定されている。
公開游法に先立ち、同会大原一会長は、「水難事故防止の大切さが見直される中、明治時代から伝わる向井流水法・水府流太田派游泳術は、厳しい指導のもとに受け継がれてきた。特に、水軍の敵前泳法と呼ばれ、浮身・潜水で身を交わし、激しい流れに向かって泳ぐ水上の伝統ある泳ぎが伝えられている。市民の皆さんにもご覧頂き、会員の日頃の練習の成果を発揮されることを願っている」と挨拶した。
その後、茨城県水戸平野を流れる那賀川を中心として発展した泳ぎで、水面に伏せて泳ぐ「平体泳法」の「平伸(ひらのし)」・「両輪伸(りょうわのし)」などの水府流太田派游泳術の13種目と、目標から目を離さず、夜間や隠密的な行動のため、波や音を立てない泳ぎの修練が必要な向井流水法游泳の「太刀渡し」・「配膳游」・「抜手雁行」などの15種目を、海水浴客が見守る中、次々と解説付きで披露された。
独特の游法が続く中、「扇子諸返し(せんすもろがえし)」では、足の指の間に扇子を挟み、旋回しても水に濡らすことのない泳ぎや、お膳を持ちながら泳ぎ手渡す「配膳游法」を披露した。会員の中で最年長となる竹原史子副会長(74)が、水面を勢い良く回る游法「水車」を披露し、拍手が沸き起こった。
最後は、10名が太鼓の音に合わせて泳ぐ「抜手雁行」が披露され、1時間ほどで全種目を無事に公開した。
游法を披露した中で、最年少の小樽桜陽高校3年・本間勘太郎君は、小学1年生から入会し、ほぼ欠かさず参加している。太刀渡しなど8種目を披露し、「太刀の鞘(さや)が水に浸からないように水平に運ぶのが難しかった。向井水法の魅力は、体力がなくても技術を身に付けると浮く泳ぎだと思う。もっと上手になり、いずれは師範へ進みたい」と意欲を見せていた。
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