小樽水彩画会 歴代会長の風貌! 市立小樽美術館


 水彩画の普及や発展に貢献した歴史ある小樽水彩画会の歴代会長6名の43作品を集めた、企画展「小樽水彩画会 歴代会長の風貌」が、3月21日(土)から、市立小樽美術館(色内1)2階企画展示室で開催中。
 戦後の水彩画の普及・発展に貢献した同会の66年間の歴史を振り返り、歴代会長の系譜をたどりながら作品を展覧する企画展。
otarusuisaiga.jpg 同会は、1948(昭和23)年に初代会長の宮崎信吉氏(1896-1966)が、会員10名で発足させ、その後、現在の会長の笹川誠吉氏(1936ー)まで6名の水彩画家に受け継がれてきた。長年に渡り、小樽の水彩画の発展に寄与し、会員同士の親睦を深めた。
 作品からは、当時の時代背景や水彩画の技法の変遷、水彩画の魅力を伝える独自の画風がそれぞれに感じられ、人物の内面や人格までも映し出す展示作品に、来場者は想像の扉を開き、鑑賞の世界に慕っていた。
 初代会長の宮崎氏は、小樽生まれで、映画看板を職業とした才能の持ち主。水彩画を好む人を集めて、同会を発足させた。戦後、絵の具が不足し、廃材を利用するなど工夫していた。職業柄、写生力があり一気に形造る特殊な技術で作品を発表。温和な人柄で人望を集め、北海道を代表する画家繁野三郎氏ら重鎮とも交友があり、繁野氏らは同会へは賛助作品で協力した。
 その後、中島鉄雄氏(1912-1984)が2代会長となる。小樽潮陵高校の教諭でもあり、スキーや陸上を得意としスポーツ万能。絵はダイナミックな作風で、不透明水彩を好んだ。
otarusuisaiga1.jpg 3代目は、宮崎氏の娘婿の森田正世史氏(1912-1990)が活動を支える。俳句を嗜み、透明なセロファンを重ねたような色彩を特徴とする透明水彩技法を使い、細かい点描が個性的で風景画の作品が多い。
 4代目坂東義秋氏(1925-1991)は、透明水彩の技法を主流とし、運河に積もる雪は、画用紙の独自の白色を使い引き立たせている。
 5代目山本泰夫氏(1921-1998)は、双葉高校や市内中学校の教師を務め、漁村で働く生き生きとした人々をテーマに水彩画を描き続けた。
 そして、現在6代目の笹川氏は、運河や歴史ある世界遺産を中心に海外で取材し、作品づくりに励んでいる。
 また、第1回目の同会の絵画展の案内状や宮崎氏70年記念展(1966年小樽丸井今井4階新ホール)のパンフレット、1951年大和屋巌氏の送別会の似顔絵など、当時、会員だった小松清氏や泉川二三佳氏、高橋好子氏らの似顔絵の寄せ書きも展示している。大和屋氏は上京し、日本水彩画会の理事長を担うなど、会員の中にも重鎮としての足跡もある。

 同館主査・星田七重学芸員は、「小樽水彩画会は、小樽の美術史そのものの流れに近く、その大半を担っている会と言って良い。油絵の画家も同会の門をくぐり、そこで指導を受けた人が沢山輩出されていった。歴代会長の中には、教員としても指導者としても優れ、画家としても一級の画家であったというのもすごく、作家としても一本立ちしていたり、日本水彩画会の会員でもある。小樽にいながら全国水準の水彩の作品を観ることができる展覧会。歴史的な流れと様々な水彩画の美しさを感じとっていただければと思う」と話した。
 小樽水彩画会 歴代会長の風貌 3月21日(土)〜4月19日(日)9:30〜17:00(最終入館16:30)
 観覧料:一般300円、高校性・市内高齢者150円、中学生無料・月曜日と3月24日休館
 次回は、4月25日(土)から7月5日(日)まで、特別展「小樽運河・いまむかし―運河保存運動の父・藤森茂男 特陳」を予定している。
 市立小樽美術館協力会HP