絵画が語る「小樽運河・いまむかし」 美術館特別展


 市立小樽美術館(色内1・佐藤敬爾館長)は、小樽運河を守ったデザイナー藤森茂男氏(1936-1987)を中心に、運河の歴史を絵画が語る「小樽運河・いまむかし」を、4月25日(土)から7月5日(日)までの日程で開催が始まった。
 運河保存運動の父と言われる藤森茂男氏の作品と、小樽にゆかりのある24名の作家の運河を題材に描いた60点を3部構成で紹介。同館・1階の中村善策記念ホールと2階の企画展示室の2つを会場にして、運河の過去から現在までを網羅した特別展。
unga-imamukashi1.jpg 第1部は「追想の小樽運河」と題して、小樽にゆかりのある著名な画家達が、運河をこよなく愛し描いた埋め立て前の運河の作品を展示。
 第2部「小樽運河への思い 藤森茂男」では、1960年代埋め立ての方針が出される中、半生すべてを運河保存運動に情熱を注いたデザイナーの藤森茂男氏にスポットをあて、埋め立て工事が進む中、1985年に集中して、運河の魅力を伝えようと描いた作品が会場に並ぶ。
 第3部「小樽運河のいま」では、整備された今の運河の作品を集めた。
 小樽の観光スポットとなる運河の歴史を、絵画を通じて改めて知る貴重な特別展で、藤森氏の作品25点は、同館では、初めて展示される作品ばかり。
 藤森氏は、小樽潮陵高校を卒業後、多摩美術大学デザイン学科で学び、1958年に帰郷。市内で企画制作会社を営み、看板やロゴマークなどをデザインした商業デザイナー。運河と倉庫群の景観を大切に思う同氏は、1972年有幌の倉庫群が壊されるのを見て、運河を埋め立てる計画に反対し、1975年「小樽運河を守る会」を発足。初期の事務局長となり、運動に情熱を注ぐが圧力がかかり、辞めざるを得なくなるが、運河を全面保存するよう強い信念を持ち続けた。
unga-imamukashi3.jpg その後、体調を崩しながらも、1983年、運河の杭打ちが始まり、埋立工事が着手された日、1日で描き上げたという代表的な作品「赤い運河」や、運河沿いの倉庫群とはしけや船を合わせた運河の魅力的な光景が描かれた作品が並んでいる。その他、小林多喜二の肖像画や、家族が描かれた闘病中のスケッチには、ユーモアが溢れている。
 海と船をテーマに描き続けた故・古屋五男氏は、埋め立て前の運河と埋め立て後の北運河を100号で描いた3作品を、木嶋良治氏は、運河をモチーフにした作品が多く、人や車などを排除し、沈黙する風景と言われる画風で、運河の水面に映る影が印象的な作品を展示。
 運河を部分的に切り取り、2人の女性と共に描く小平るり子氏の作品や、一番新しい作品の「冬色」を描いた羽山雅愉氏は、運河に魅力を感じ風景画を描き始めた小樽在住の作家。
 同館・星田七重学芸員は、「小樽運河の作品を沢山所蔵する中で、小樽の歴史として運河保存運動は外せない。運河を保存すべきと声を上げた藤森氏の存在を知ってもらうため、藤森氏を中心とした前後を含めて3部構成で展示した。
 絵の素晴らしさもあるが、藤森氏の残した言葉に感動し、その残そうとした絵の意味合いは、他の作家とは違う。埋め立てが決まった後、自分に何ができるか考え、1983年から1985年にかけて、ものすごい勢いで作品を描いた。
 デザイナーは厳しい世界であり、求められるクライアントがいて、満足できるものを提供しなければならない。運河でも様々な表現があり、生活の中で先に起こりうることを予測し、作品を提案するデザイナーの厳しい世界で培われてきた表現なのかもしれない。運河の素晴らしさを知ってもらうために描いた絵となり、ほかの作家とは違う。より深く知りたい方は、梁川通商店街とコラボ企画し、中央市場特設スペースでの展示も楽しんでもらいたい」と話した。
unga-imamukashi2.jpg 14:00から、展示室を会場に、「夫 藤森茂男と生きた日々」と題して、妻(藤森茂子)である日本舞踊藤間流・藤間扇玉社中と、同館・佐藤館長が対談し、90名が会場に集まった。
 佐藤館長が記者時代に藤森氏と知り合い、扇玉さんは、潮まつりが縁で結婚した。その馴れ初めや、扇玉さんが見た夫藤森氏についてのエピソードを交えて語り、佐藤館長と対談方式で進められた。
 佐藤館長は、地域に残る歴史を後世に伝えることも、美術館にとって大切であると語った。
 扇玉さんは、夫・茂男氏について、保存運動に奮闘し、悔しさのあまり泣いたこと、1日で描き上げた「赤い運河」をはじめ、作品づくりの過酷な様子や、亡くなった日のことなど、当時を振り返りながら語った。
 扇玉さんは、「人生に情熱をかけ、書き残した絵を、ご覧いただきたい。主人の思いが伝えられるよう願い、小樽に住むことの幸せを主人に伝えたい」と話した。
 小樽運河・いまむかし 4月25日(土)〜7月5日(日)9:30〜17:00
 市立小樽美術館(色内1)1階中村善策記念ホール・2階企画展示室
 月曜日・4月30日(木)・5月7日(木)・8日(金)・12日(火)・13日(水)休館
 観覧料 一般400円・高校生・市内70歳以上200円・中学生以下無料(団体割引あり)
 問合せ 0134-34-0035
 関連事業
 絵画と舞踊のコラボレーション「運河との対話」藤間扇久華(藤森五月)
 5月9日(土)14:00から 市立小樽美術館2階展示室
 観覧事前予約 0134-34-0035
 市立小樽美術館協力会
 梁川商店街コラボ企画「デジナーレの精神~藤森茂男の実像」展覧会期間中
 中央市場第3棟内特設スペース
 デザイナーとしての作品や妻・扇玉さんによる新聞掲載記事、プライベート写真など
 梁川通り商店街
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