SF・ミステリの挿絵の巨匠 楢喜八原画展


 市立小樽文学館(色内1・玉川薫館長)は、学校の怪談の挿絵で知られている、イラストレーター楢喜八(ならきはち)氏にスポットをあて、「学校の怪談とSF・ミステリのある風景 楢喜八原画展」を、6月6日(土)から8月2日(日)の日程で開催している。
narakihachi1.jpg 楢氏提供の資料1,100点の中から、大学時代に描いた裸婦などのクロッキー、口絵や挿絵等の原画250点、掲載図書などを含めて370点を展示している。
 楢氏は、1939(昭和14)年サハリン生まれ。1948(昭和23)年から1958(昭和33)年まで、北海道雨竜郡沼田町で過ごす。高校卒業後、金沢美術工芸大学油絵科に学び、卒業後、デザイン会社に勤務するが、1964(昭和39)年以後、イラストレーターとして活動。その後、1968(昭和43)年、ミステリマガジン誌オーガスト・ダーレス「ダークボーイ」の挿絵でデビュー。ミステリやSFを中心に描き、細かいGペン(つけペンの一種)を使った点描で表現。顔をクローズアップしたりデフォルメ(変形させて表現)したユーモアの加味された幻想的な作風で人気を集めた。
narakihachi2.jpg 子どもを対象としたものがほとんどなかったが、1990(平成2)年から「学校の怪談(著:常光徹)」9巻の口絵や挿絵を担当。怖いけど見たくなるユーモアが生かされた「トイレの花子さん」「口裂け女」などをはじめ、子ども達に絶大な人気を集めた。
 「新・学校の怪談」5巻、「学校の怪談A~E」5巻と続き、今年も「学校の怪談ベストコレクション」を刊行し、ロングセラーとなる。
 他にも、文芸春秋・新潮社・講談社などの大手出版社の雑誌やSF専門誌、阿刀田高・筒井康隆氏などのミステリ作家の小説のイラストなどを早くから手がけた。キャリアも長く、古いファンから子どもまで幅広い世代に支持されている。
 会場では、1960年後半から現代までの挿絵や口絵の原画作品を展示。一部を額装し、壁にずらりと掛け、ガラスケースには、原画や掲載図書を所狭しと並べている。舞台美術も担当し、舞台のポスターや沼田町のあんどんまつりのポスターもあり、様々な作品に出会うことができる。
narakihachi3.jpg また、同展にちなみ、「学校の怪談」の音楽室・理科室・トイレを再現したコーナーも面白く、子どもから大人まで幅広い世代が楽しめる企画展となっている。
 玉川館長は、「幅広い年代が楽しめ、ミステリ・SFファンにおすすめ。学校の怪談で育った若い人や子ども達にもぜひ観ていただきたい。楢さんの絵は、本を読んでいなくても物語性を感じ、幻想怪奇でどこかユーモラス。これからの季節に相応しい物語の世界を楽しんでもらいたい」と話した。
 楢喜八原画展 6月6日(土)〜8月2日(日)9:30〜17:00(入館は16:30まで)
 市立小樽文学館(色内1)展示室
 月曜日(7月20日を除く)・7月21日(火)・22日(水)休館
 入館料:一般300円、高校生・市内70歳以上150円、中学生以下・障がい者無料
 問合せ:0134-32-2388 市立小樽文学館
 市立小樽文学館