学校の怪談・楢喜八氏の語る会 小樽文学館


 市立小樽文学館(色内1・玉川薫館長)では、開催中の企画展「楢喜八原画展」の楢氏を迎え、7月2日(木)・3日(金)16:00から、作品を観ながらミニトークとサイン会が開かれ、初日の2日(木)には、ファン10名が参加した。
0702narakihachi1.jpg 同館では、学校の怪談でお馴染みのイラストレーター楢喜八氏の企画展を、6月6日(土)から8月2日(日)まで同館展示室会場で開いており、SFやミステリの口絵や挿絵等の原画250点と掲載図書など含め370点を展示している。
 楢氏は、1939(昭和14)年サハリン生まれ。1948(昭和23)年から1958(昭和33)年まで、北海道雨竜郡沼田町で過ごす。高校卒業後、金沢美術工芸大学油絵科に学び、卒業後、デザイン会社に勤務するが、1964(昭和39)年以後、イラストレーターとして活動。その後、1968(昭和43)年、ミステリマガジン誌オーガスト・ダーレス「ダークボーイ」の挿絵でデビュー。ミステリやSFを中心に描き、細かいGペン(つけペンの一種)を使った点描で表現。顔をクローズアップしたりデフォルメ(変形させて表現)したユーモアの加味された幻想的な作風で人気を集めている。
0702narakihachi2.jpg 楢氏のデビュー作から年代を追いながら、作品にまつわるエピソードや時代背景にも触れながら、ミニトークが始まった。
 70年代は、SFブームとなり、筒井康隆氏やかんべむさし氏のユーモラスなSF作品で、怪奇とは違った雰囲気で、かんべ氏にも大変気に入ってもらった。80年代は阿刀田高氏、90年代は清水義範氏、外国では、ドナルド・E・ウェストレイクなど、様々な作家の挿絵を手がけた。作家に気に入られ、指名されるのが一番嬉しかったという。
 自信作の奇想天外の表紙が並べられた硝子ケース前では、原画のサイズが大きいことや白黒で描くことを説明し、当時の思い出を語った。一番のお気に入りは、「異次元の覗く家」(ウィリアム・ホープ・ホジスン)で、とても面白いホラー小説だという。
 以前は、作家の手書きの原稿用紙を渡され、書体から作家の特徴が分かるのも楽しみのひとつだったが、ワープロやパソコンになり、書跡が分からなくなったという。社会現象も挿絵に影響し、挿絵からどんな物が流行っていたのかを読み取ることができる。
 作品に中には、ミステリやSFだけではなく、2010年の「田んぼの生きもの誌」(稲垣栄洋)では、田んぼや畑に生息する虫やカエル・トンボなど、70点のイラストを描いた。
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 未だ、恋愛小説の挿絵の経験はなく、いとこの子にあたる細坪基佳氏のCDアルバムのイラストを初めて手がけた。
 プロになるためには?の質問に、「人と違うものを描き、個性を持ち、それを売り込む。イラストを見ると誰が描いた物か分かるようになれば」と答えた。
 その後、サイン会が開かれ、参加者は、憧れの楢氏と言葉を交わしサインをもらい、満足した様子だった。
 市内在住の男性は、「楢氏の9歳下の沼田高校の後輩で、昔からの友人。10年以上会っていなかったので楽しみにして来た。学校の怪談の挿絵は、小学生向けに描き、怖くなく親しみが湧くイラストを描いている。昔と比べると、優しさが絵に出てきていると感じた」と話した。
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