こんぴらさん"火渡り"!惜しまれながら最終回

 天狗山の麓の自然豊かな高台にある高野山真言宗・準別格本山天狗山・金比羅大本院(松ヶ枝2)で、7月9日(木)・10日(金)の2日間、例大祭が行なわれた。
 祭りのメイン行事となる2日目の10日(金)13:30から、灰の上を素足で歩く「柴灯大護摩法要(火渡り)」が行われ、地域住民や遠方からの信者ら約150人ほどが集まった。
konpirahiwatari1.jpg 火渡りは、穢れや心の迷い・煩悩を焼き清め、無病息災や商売繁盛などを祈願するもの。
 80年以上続くこの火渡りは、信徒らの高齢化などを理由に、残念なことに、今回が最後となった。惜しむ声が囁かれる中、最後の火渡りが厳かに営まれた。
 信徒協議会のひとりは、「祭りの大きな行事の火渡りが最後となって寂しい。年を取っても続けてもらいたかった。地域活性化のために、昔を忍び餅つきやステージを用意している。今後、火渡りが終わっても、祭りは続けていく」と話した。
 ”こんぴらさん”の愛称で親しまれる御本尊の名は、「金比羅大権現」と言い、江戸時代中期に全国へ信仰が広がった。海上交通の守り神として信仰され、漁師・船員など海事関係者の崇敬を集めている。現在、4代目秋山宥澄氏が住職を務める同寺院は、大正15年に小樽に建立。当時、盛大に遷座法要(御本尊を移動する際に行う)が行なわれた。

 柴灯大護摩法要(火渡り)は、秋山住職をはじめ、市内、倶知安、恵庭、登別、留辺蘂などの僧侶14名が出席。無病息災、商売繁盛、交通安全、五穀豊熟、海上安全、厄難消除等を祈願して開かれた。
 僧侶4・5人が、火渡りに使われるトドマツの丸太を割り、会場の中心部に角材を積み上げ、枝葉で覆い、数日がかりで準備した。結界と言って、信徒でも入ることのできない聖なる領域の中で作業が進められた。
 清々しい晴天の中、会場をぐるりと参拝者が取り囲み見守る中、僧侶が入場。法螺貝の音色とともに、読経が響き渡った。
 祈願を込めて僧侶が点火すると、瞬く間に火柱が上がり、火の粉が舞い、火の塊となってバリバリと音を立て燃え上がった。見守っていた参拝者にも、熱風が伝わってきた。納め札も次々と炎の中に投げ込まれた。
 次第に炎は小さく炭となり、僧侶が渡りやすいように慣らし、いよいよ、炭の上を歩く準備が整った。
konpirahiwatari2.jpg 秋山住職が最初に渡り、参加した僧侶達が続き、参拝者が列を作り、順番を待った。火渡りに参加する参拝者は、頭に冠を付け、金の御幣を持ち、素足になり「南無金比羅大権現」と唱えながら、それぞれの願いを込め神妙な面持ちで炭の上を歩いた。
 札幌在住の70代女性は、「娘と孫と火渡りに参加した。火の様子を見守りながら自分の願い事をした。渡る時は、南無金比羅大権現と唱えることで精一杯だったが、気持ち良く渡った」と話した。
 終了後、寺院前広場で、信徒協議会による餅つきが行われ、6kgの餅米を2回に分けてつき、汁粉ときな粉で参拝者に振舞われた。
 15:00から本堂で、札幌を拠点に活動する「M・トイ・ボックス」のコンサートが開かれ、つきたての餅を味わいながら音楽を聞き、祭りを楽しんでいた。
 金比羅大本院
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