「小樽・坂道物語展」 文学館の企画展


 小樽の坂道を絵画や詩、写真などで紹介する「小樽・坂道物語展」が、8月8日(土)から9月6日(日)まで、市立小樽文学館(色内1・玉川薫館長)で開かれている。
sakamichi1.jpg 小樽には多くの坂道があり、住民にとっては共存せざるを得ないもので、時として、生活の妨げになることもしばしばだが、芸術的な観点で多くの坂道を紹介している。
 坂道を代表する手宮石山町にある「浄応寺の坂」の勾配20%の傾斜を体感できる坂を、会場に設置するなど、面白い企画展となっている。
 この企画展に合わせ、飛ぶ鳥の目から見たように描いた「鳥瞰図」(ちょうかんず)を、小樽在住のイラストレーター・田中眞理氏が、小樽の主な坂道を記し制作した。
 小樽には、「外人坂」や「船見坂」、「地獄坂」などの愛称が付けられた坂道が、50にも及び、坂の街と言われ、様々な文章や詩・映画などでも紹介されている。
 ここでは、小樽を代表する文学者の小林多喜二の碑文の一部で、1930 (昭和5)年11月11日獄中から、村山籌子に宛てた手紙の一部や伊藤整の初恋詩篇の「月夜を歩く」の詩を掲載した。
sakamichi2.jpg 札幌在住の山口忠氏が、2006(平成18)年頃から街中を歩き、主に古い建物や路地、坂を水彩スケッチをして楽しみ、自身のインターネットブログに載せた。その中からスケッチブックやA4の画用紙に描いた原画150点を、額装やショーケース内で展示した。
 良く知られているポイントにこだわらず、街の隅々を丹念に歩き、あまり知られていない場所なども好んで描かれ、石山中学校の坂や馬追坂、国道5号線と銭函駅を結ぶ坂、外人坂など、回りの住宅などの建物も入れた風景画を楽しむことができる。
 また、北海道新聞記者の小林金三氏が、1973(昭和48)年から80年代初めに描いた、小樽の町並みなどの素描や水彩画など100点を、平成20年に文学館に寄贈した。その中から土地の起伏や勾配を感じさせる作品・稲穂4丁目静屋通りや、石山町の津田商店などの絵画8点を選び、大型ケース内で紹介している。
 広報おたるの2001(平成13)年5月から2006(平成18)年5月までの5年間、文献と現地調査を丁寧に行った「おたる坂まち散歩」を掲載。坂で暮らす人たちの感想や言い伝えなど丹念に取材したページを展示紹介している。現在も、インターネットで見ることができる。広報おたる連載「おたる坂まち散歩」
sakamichi3.jpg 北手宮の坂の上に住む画家三宅悟氏の絵画や、その近所に住む「あとりゑ・クレール」店主の高橋明子氏の「三宅さんの家」の詩など、小樽の坂にまつわる作品も展示されている。
 玉川館長は、「観光的な小樽の魅力を説明する時にも、変化に富んだ海と山の自然に恵まれた言い方をよくし、詩や絵画、写真にも坂道が取り入れられていることが多い。坂道は、小樽の人々にとって、冬は特に大変な要素のひとつでもある。普段歩いていて体で実感している小樽の坂道が書かれたものを探していたところ、広報おたるの連載記事は、これだけ豊富にそれぞれの坂道について、人々の思いが積み重なった歴史があり、生活の場としての坂道の大変さを実感できる。また、菁園中学校の生徒で結成した小樽探検隊の、小樽を身を持って調査探検した子ども達からの寄稿も展示。意識して隅々まで歩いた風景をスケッチし、どこの場所でいつの風景か正確に記録した150点の原画も紹介し、様々な坂を感じてもらいたい」と話した。
 なお、関連事業として「坂道文学歴史散歩」を、8月23日(日)10:00から13:00まで実施。フリーライター渡辺真吾氏の案内で、なじみ深い「職人坂」、「外人坂」などを巡りながら歴史的成り立ち、様々な逸話を紹介する。
 小樽・坂道物語展 8月8日(土)〜9月6日(日)9:30〜17:00(入館16:30)
 市立小樽文学館(色内1) 月曜日休館
 入館料一般300円・高校生市内高齢者150円・中学生以下障がい者無料