組立式能舞台の"老松"複製品 手稲神社へ奉納

 9月17日(木)16:00過ぎ、旧岡崎家能舞台を活かす会(三ツ江匡弘会長)は、昨年7月に見つかった北海道最古と思われる1935(昭和10)年製作の旧小樽昭声会(旧渡辺昭声会)「組立能舞台」の部材で、15年ほど前に奉納されていた手稲神社(札幌市手稲区)の「老松」を譲り受け、それに代わる複製品を奉納した。同会で保管管理し、晴れて組立式能舞台の部材が揃うこととなり、関係者一同は喜んでいる。
roumatsu1.jpg 今年2月には、同神社から「老松」を借り、能舞台の復元に成功。お披露目と併せ、組み立てを祝う能の上演会を行い、大勢の観客が詰めかけ能の上演を興味深く鑑賞した。また、同神社からは「老松は、小樽のものなのでぜひ返したい」との意向を聞き、4月に開かれた総代会でも承認されていた。
 能舞台の正面の「老松」は、鏡板の松と呼ばれ、能舞台を象徴する存在。この度の「老松」は、組立式能舞台の部材のため、屏風の様に折り畳んで自立させる事が出来るもの。能舞台に組み込む時は、四周を木枠で囲んで鏡板化でき、多様に対応できるようになっている。
 複製作業には、三ツ江氏や北海道職業能力開発大学校の的野博訓建築科指導員担当の卒業研究の中で6名が携わった。現物の老松の写真を撮影し、補正ソフトを使い色を現物により近づけ鮮明にし、2/3に縮小してプリントした。高さはオリジナルと同じ2.1mで、幅を5.4mから3.6mに小さくなった既製品の屏風に、切り抜いた老松を貼り付けた。
roumatsu2.jpg 作業に参加した同大2年・西澤天汰さん(20)は、「紙を貼る作業が大変で、のりを塗ると紙が伸びてしまって、張ったり剥がしたりと一番苦労した」と話した。
 同会長は、昨年7月に発見された組立式能舞台を半世紀ぶり復元しようと、同氏が外部講師を務める北海道職業能力開発大学校(銭函3)と共同研究で、1月末から学生らと復元作業を開始した。
 同指導員とその学生は、「歴史的建造物を利用したまちづくり活動への参画」として作業に参加した。部材の「老松」は、手稲神社に奉納されていることを知り問い合わせ、借用してはめ込み使用。
 手稲神社の「老松」は、同神社の近隣者が小樽で能を学んでいて、能の会の解散により部材が売り渡され、老松を買取り、同神社が使うならと15年ほど前に奉納した。その時に橋掛かりの欄干も一緒に奉納されたという。
roumatsu3.jpg その後、年1度の例大祭で、能楽サークルによる奉納能楽上演時に使用されてきた。今年は9月20日(日)に例大祭が開かれ、17:15から30分間、奉納能楽が披露され、複製品の初公開となる。
 同神社禰宜・山口貴生氏は、「老松は縁があり同神社に奉納されたが、元に返すことができ、それに代わる新しい屏風が入手でき良かった。回りの人々も喜ぶと思う。様々な形でお披露目したい。小樽で盛んに披露された能舞台が蘇り良いことだ」と話した。
 三ツ江氏は、「複製品が納められて良かった。屏風(老松)は、会で心置きなく使うことができ、手稲神社の方々の心遣いで無事に里に帰ることができて良かった」と感謝していた。
 同指導員は、「良い経験となり勉強になったと思う」と話し、同大学では、昨年に引き続き、組立式能舞台を題材に、組立図を作成したり、様々な研究が行われる予定。
 旧岡崎家能舞台を生かす会HP
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