組立式能舞台を復原! 職能大建築科学生

 北海道職業能力開発大学校(銭函3・前田康二校長)は、2014(平成26)年7月に小樽市民会館で発見された、北海道最古と思われる旧小樽昭声会の組立式能舞台を、建築科学生が復原した。
 2年の藤井成一・松本明人・西澤天汰・浅水遼太郎・品田憲吾さんら5名の学生によって研究が続けられ、機能性と組立方を向上させた組立式能舞台の復原に大きく貢献し、今後、能舞台の活用や発展に期待が集まっている。
 その研究発表会が、2月18日(木)9:20から、同校N101室で「2015年度建築科総合制作実習発表会」で行われた。
 この組立式能舞台は、昨年1月に、同舞台再生ブロジェクト研究代表の旧岡崎家能舞台を活かす会・三ツ江匡弘会長が、同校の実践的教育「都市計画」の講義の外部講師を務める縁で、共同研究として復原に取り組んだ。
 能舞台の建築構造に詳しい市内梅ヶ枝町在住の梶原建装・木工房「匠伽藍」を主宰する梶原邦雄棟梁の協力を得て、建築科准教授・的野博訓氏とその学生も「歴史的建造物を利用したまちづくり活動への参画」として作業に参加。試行錯誤を重ねて完成させ、昨年2月の北海道ポリティックビジョンに関連して、組立式能舞台のお披露目と能を披露し、多くの市民らが能舞台を鑑賞し注目を集めた。
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 昨年4月からは、的野准教授指導の下、学生だけで部材を整理し図面を作成、欠損した部材を復原し、3次元による組立工程のアニメーションや模型を作成に向け、大掛かりな研究を開始した。
 学生達は、組立式能舞台の歴史や特徴を調査し、関係者のヒアリングから、組み上げについては、1971(昭和46)年に5日間で約45名が、1972(昭和47)年は人数は不明だが3日がかりだったことや、過去5回組み上げられていることが分かった。
 部材の状況を調査分析し、欠損していた部材を復原するため、既存部材200箇所以上の実測や長さの測定に莫大な時間を費やした。それを基に、現存しなかった平面・立面3面・断面・土台・足固め・梁伏図の計8枚を作成。
 部材の数を表にまとめ、現数235箇所・欠損箇所数113箇所で、総数348箇所の部材で構成されたものの、99箇所を復原した。主なものでは、梁上の菱欄間斜材は60本必要だが、1組4本しかなく、14組56本を復原した。今後利用する旧岡崎家能舞台を生かす会の三ツ江会長の意見を聞き、切戸口を現代人の身長に合わせ800mm×1200mmに変更。演舞の様子を覗くために、無双窓を設置した。
 また、手稲神社所有の鏡板がこのほど戻され、それに代わる複製品を作成し、同神社に収めた。 関連記事1
kumitatenoubutai2.jpg これまで組立図面がなく組立に苦労していたため、組立工程の手順を明らかにし、3次元を用いた組立工程アニメーション(2分程度)を作成した。約350の部材が順番に映し出され分かり易くし、今後の組立に大きく貢献し、本舞台を歩きながら全体を見渡せる動画も制作した。
 これらの基本データを基に、実測調査や確認作業を繰り返し誤差のない、10分の1の模型を完成させた。
 模型制作に取り組んだ品田さんは、「実物を1から組み立てたという思い入れがあり、次の世代の人が研究できるように制作した。こだわった部分は、老松を手書きにして、実物にほぼ近い状態に完成させた」と話した。
 リーダーの藤井さんは、「古い年代のもので、特殊な加工や現在使われていないものもあった。現代人に合わせた工夫を施す所に試行錯誤し難しかった。良い材料を使っていたので、使い方や保管の仕方を考え、活かす会の会長に上手く活かしてもらえると能舞台も喜ぶと思う。2時間半で組立てられるようになり、貢献できたと思う。一生できない貴重な経験となった」と話した。
 的野准教授は、「学生の頑張りが評価され嬉しく思う。昔の部材でどう扱って良いの分からない所もあり、慎重に扱い良質な松のため傷をつけないように配慮した。図面もなく推測ですべて行い、断言できないこともあった。学生には、良い教材となり、良い経験となった。今後、続けられるのであれば、切戸口の演者の待つ場所など、裏方を手がけたい」と話した。
 学生達は、部材をすべて理解し、2時間半ほどで組立ができるようになり、何度も組立を繰り返しているという。
 なお、2月19日(金)・20日(土)同校で、「第13回北海道ポリティックビジョン」を開催し、復原された組立式能舞台の展示と同学生が発表する予定。
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