小樽ゆかりの画家・武石英孝展 小樽美術館


 市立小樽美術館(色内1)の平成29年度「小樽・美術家の現代シリーズ」最後の企画展「命の脈動 武石英孝展」が、3月10日(土)から同館2階企画展示室で始まり、初日から多くの人が訪れた。
takeishi1.jpg 同企画展では、顕著な活躍が認められる同氏の人物を主体とした、思い出の受賞作品を含む37点を展示し、画業の足跡を辿る。
 小樽出身の同氏は、桜陽高校時代に白蟻会の部長を務め、部員が20~30人も在籍していた活発な時代だったと当時を懐かしむ。学生美術全道展で文部大臣賞を受賞し、美術の道へ進むきっかけとなった。大学まで小樽で過ごすが、美術教師として4年間を斜里高校に勤務。その後、札幌厚別高校から江別に赴任し、現在は岩見沢に住み、札幌東高校で教鞭をとる傍ら、道展・光風会・日本美術家連盟の会員となり同作品展に向けて、積極的に製作活動に励んでいる。
 100号サイズの大作に、祖父や娘・教え子の人物を主体とした作品を、6つのテーマに分け展示。
 人物を主体とし、「デッサンをしっかりと厳しく物を見つめることができ、感情移入し易く、ごまかしがきかない緊張感を持ち続けたい」と話す。
takeishi2.jpg 娘をモデルにした2000(平成12)年の150号の大作「馴鹿」は、道展最高賞の北海道美術協会賞を受賞し、道展への再スタートとした。この作品は、取材旅行で冬の幌延に出かけ、トナカイ観光牧場で多数のトナカイをバックに、娘の手には魔除けとされる柊を持たせた。
 1909(明治42)年生まれの妻の祖父を、101歳で亡くなるまで発表した作品を集め、2007(平成19)年以降は、集中的に娘をモデルにした。「冬の日」は、日展初入選した作品で、家族で出かけた開拓の村で、小樽の実家に似た家に心ひかれ描いた。2012(平成24)から5年間は、娘の成長の過程を絵で追った。
 同氏の作品の背景は時代を感じさせるものが多く、育った家の古い板塀や壁を取り入れ、光や日差しと合わせて描く。人物の手には、魔除けの柊・林檎・チューリップなどを持たせ、鑑賞する人の目を引く。
 オタモイ海岸の龍宮閣を題材にした「楼閣」は、子どもの頃見た土台のコンクリート部分を覚えていたが、小樽市総合博物館を訪ね、古い写真を確認し想像を加えた。自宅近くの神社の森や再開発で移転するJR苗穂駅も残したい風景として描いている。
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 現代の肖像画として、高校の教え子をモデルに作品を発表。2017(平成29)年道展出展作品「きこえる」は、背景にキトラ古墳の壁画に残された天文図を、彼女の手にはスマホを持たせた。古代と現代をコラボさせ、時の流れを感じさせようとの深い思いが込められていると明かす。
 日本画風に金箔をバックに施した優雅なフラミンゴ、躍動感溢れるホッキョクグマは屏風に、動物達の脈々と生きる姿も描かれている。
 同氏は、「生まれ育った小樽の美術館で作品を発表でき、とてもありがたくこれからの糧となる。小樽はいつまでも忘れられない大事にしたい土地で実家もあり、お世話になった土地。ぜひ皆さんに観ていただきたい」と話していた。
 小樽・美術家の現在シリーズ企画展「命の脈動 武石英孝展」
 3月10(土)〜5月31日(火)9:30〜17:00 市立小樽美術館(色内1)2階企画展示室
 月曜日(除4/30)・3月22日(木)・5月1日(火)・2日(水)・8日(火)〜10日(木)休館
 関連事業
 3月21日(水)14:00〜15:00 武石英孝氏によるアーティストトーク
 3月17日(土)14:00〜15:00 ミュージアムダンスショー
      出演:野口花代&hina fetia、石田達也
 3月18日(日)09:30〜12:30 モデルデッサン会 1階研修室
      講師:武石英孝、モデル:野口花代 定員20名・材料費200円
 3月28日(木)〜4月1日(日)10:00〜17:00(最終日16:00)
      武石早代作品展 同館市民ギャラリー