石原慎太郎氏 小樽文学館で講演会

 市立小樽文学館(色内1・玉川薫館長)は、石原慎太郎氏が青春時代に描いたスケッチと空想画約100点を展示する企画展「石原慎太郎 破乱の十代のエスキース展」を、6月30日(日)まで開催している。

 展示作品のほとんどは、石原氏が10代の中学生から高校生の4〜5年の間に描いたもの。青春期の煩悩や孤独、苦悩の内にも未来の可能性を求めようとする情熱が表現されている作品群で、来館者の目を楽しませている。

 企画展に合わせ、6月25日(火)13:00から、同館1階多目的ギャラリーで、石原氏による講演会「文学とその時代」を開き、事前に申込みを済ませた約150名が、同氏の話に耳を傾けた。
 タイトルに「破乱」を使用したのは、十代の混沌とした様子を表現したと話す。

 講演会に先立ち、12:30から同館1階研修室で、石原氏が描いた油彩2点・素描241点・水彩2点の絵画一式(1,250万円相当)を寄贈し、小樽市表彰規則により篤志者表彰を行った。小山秀昭副市長、林秀樹教育長、四男の延啓さんが見守る中、迫俊哉市長から表彰状が贈られた。

 一昨年、同館で「石原慎太郎と裕次郎展」を開催していた頃、延啓さんがたまたま通りかかって開催を知り、感銘を受けた。翌日、亀井学芸員から話を聞き、その印象を父である同氏に伝え、大切な「十代のエスキース」と呼ばれる約250点を同館に収めた。

 小樽にゆかりの深い同氏は、1932(昭和7)年に兵庫県神戸市に生まれ、1934(昭和9)年に弟・裕次郎が誕生する。父親の転勤で1936(昭和11)年に小樽に住み、現小樽藤幼稚園、稲穂小学校へ通う。1943(昭和18)年に神奈川県逗子市に転居した。

 作家・俳優・脚本家・監督を経て、1987(昭和62)年に運輸大臣となり、1999(昭和11)年に都知事に、2012(平成24)年に衆議院議員として国政復帰。2014(平成26)年82歳で政界を引退し、現在に至る。

 冒頭、企画展について同氏は、「(自分の絵を)展示してもらい、描いた頃の私に出会ったようで懐かしく思い、これは人生の奇跡。亀井さんとの縁で、私にとっては、晴れがましい展示会となり、第二のふるさとで取り上げてもらい、夢のような話。心から感謝する」と述べた。

 また、小樽にゆかりの深い伊藤整氏との出会いについて、一橋大学で公認会計士になるために学ぶが、休刊していた一橋文藝(同人誌)を復刊するために友人らと動き、伊藤氏に資金援助を頼み、1万円もらったなどのエピソードを交えて語った。

 同人誌に初めての小説「灰色の教室」を発表し、2作目の「太陽の季節」は、2晩で書き上げ、3日かけて清書した作品で、最年少で芥川賞を受賞。その時の選考委員の1人が伊藤氏で、今日の自身の作家の誕生に力添えがあったと語り、最大の敬意を示す先輩の伊藤氏との出会いも人生の奇跡と感謝した。

 また、「珍しい存在。他の作家が立ち入ることのできない、物書きの失敗談でも書けば良い。大いに遊びたまえ。好きなことをやりなさい」との伊藤氏の言葉に、映画出演し、映画監督も経験したという。

 裕次郎氏については、「弟は、私の心の中に生きている。ひとり言で話しかけている」と語り、裕次郎氏と一緒にスキーをしたことや野犬に遭遇したこと、沢山の貨物船がいた港など、小樽で過ごした日々を思い出していた。

 ◎企画展「破乱の十代エスキース展」案内(外部)