能面の世界 外沢照章能面展

 第15回外沢照章・能面展が、7月30日(火)~8月4日(日)の日程で、小樽市公会堂(花園5)地下1階展示室と3号室を会場に始まった。

 

 能楽堂が見える会場に、新作5点を含む44点の能面がずらりと並んだ。今回の新作「朝倉尉」が加わり71種類を達成。

 

 初日の30日は、10:00から12:00まで、外沢氏による彫りの実演を公開。1年に1度の展示会とあって、多くの人が訪れていた。以前に能に関する勉強会があり、能面展の告知を聞きつけた山の手小学校生3名も来場し、興味深く話を聞いていた。

 

 畳2枚ほどのスペースで、解説を行いながら彫りの実演が行われた。来場者が囲むように座り、間近で能面を鑑賞。一部触ったり、顔にかけたりして、どんな視界なのか体験もできた。

 

 展示会場から能楽堂が良く見え、能楽堂の目付け柱の意味についてや能面の物語を交えて、展示作品の解説を分かりやすく語った。

 

 能面250種類のうち、基本形92種類の7つのカテゴリー(翁系・鬼神系・尉系・男系・女系・怨霊系・狂言系)をまんべんなく打つことを目標に、今回の新作は「朝倉尉」「小面(雪)」「嘯吹」「赤般若」「蛇」の5点を発表。新しい1種類(朝倉尉)の面を合わせると、今回で71種・100点を製作したことになる。


 新作「朝倉尉」にある髭は、白馬の鬣を、1日かけて草木染めを行い、納得できる色になってから40本を束ね74束作るという。時間と手間のかかる大変な作業の毛が一番やっかいだという。

 

 新作の小面(雪)は、豊臣秀吉が愛した3つの小面(月・花・雪)のひとつ。ふくよかさとおでこが広く幼さが出ていて、間近よりも6mほど離れて鑑賞することを勧めた。また、隣に展示された小面(花)と一緒に鑑賞できるのが、今回の一番の見所となる。

 

 新作「赤般若」は、30年経過したため2代目を制作し発表。般若は、角の曲面に苦労する、女性の怨霊を表した面で、赤般若は、身分の低い女性の嫉妬を表した曲・道成寺、白般若は、高貴な女性の嫉妬で代表曲は葵上。黒般若は、嫉妬とは異なり鬼女を表した曲・安達原に使われる。

 

 5作目の新作は「蛇」。深い嫉妬のあまり蛇と化し、怒り狂った極みを表現。口からは舌が覗く。

 

 「近江女」は、左右非対称やてかりから庶民さを、「増髪」は狂乱する女を、白目に金を施した「泥眼」は、気品の高さと妖気が漂うと、それぞれの特徴を語った。

 

 使用感のある色落ちした部分や傷を、そっくりに再現するため、面には自分の個性が出せないが、裏面に工夫を施していることを明かした。

 

 厳しい暑さの中、訪れた人々は、能面の奥深さに触れ、貴重な時間を過ごしていた。

 

 

 同氏は、1942(昭和17)年東京生まれ。建具職人の父親の側で、子どもの頃から木を削って遊んでいた。父親が亡くなった時に使用していた突ノミなどを譲り受け、1978(昭和53)年の「別冊太陽」に掲載された能面と出会い、42歳の時、近くの能面教室を訪問したことが始まりとなり、能面を打ってから35年が経つ。

 

 2003(平成15)年に小樽に移住し、今年で15年目となる。2006(平成18)年に初個展を、2009(平成21)年からは公会堂で毎年開催し、夏の時期の恒例行事となった。

 

 外沢氏は、「特に小面(雪)と小面(花)を見比べて、違いを観ていただきたい」と、多くの来場を呼びかけた。31日も、彫りの実演が10:00~12:00に行われる。

 

 第15回外沢照章・能面展 7月30日(火)~8月4日(日)9:00~17:00

 作家待機:10:00~12:00・14:00~17:00、彫り実演:30日・31日10:00~12:00

 小樽市公会堂(花園5)地下1階 入場無料

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