美術館特別展関連事業 アーティストトーク第2弾

 市立小樽美術館(色内1)2階企画展示室で開催中の「小樽・美術家の現在シリーズテーマ展『風土』」関連事業のアーティストトーク第2弾が、12月7日(土)14:00~15:00に、出展作家6名による自身の足跡や制作エピソードが語られ、観覧者57名が耳を傾けた。

 

 不思議で魅力的な立体作品を発表する小樽在住の阿部典英氏は、「ユキミザケ・サカサツララ」を発表し、どこにでもある風景をアートに、いろいろな形や空気・匂い・音・体験したものや自分に染みついたものが風土で、自分のふるさとの風土への気づきが表現のテーマだという。

 

 小樽在住で元教員の上嶋俊夫氏は、学校給食で使われていた道具、通学で利用していた手宮駅の思い出深い手宮線跡や高島造船所を描き、失われていく風景や物に心惹かれ、小樽の風景(風土)は、文豪や芸術家を育み、素晴らしい作品が生まれたと話した。

 

 日洋会会友の高橋晟氏は、生まれ育った小樽運河を出展。独学でデッサンも構図も考えずに描き、削ったり足したりして描くことで、新しい発見に期待し取り組むという。後期高齢者になってからの作品がズバ抜けている、生涯約3万点の作品を残した葛飾北斎に触れ、「これからも健康で絵を描き続けたい」と語った。

 

 生まれも育ちも小樽で過ごした抽象画家の末永正子氏は、今回のテーマを考えてみると、2017(平成29)年の展覧会で、市外の人々に小樽について褒められ、小樽には沢山良い所があると感じた。ここ近年作品作りでは、風景の景に始まり、小樽の気候や季節を取り込んでいた。刻一刻と過ぎ去る時間、移りゆく風景や風の一瞬に想像をめぐらし、色と形、線と線を自由に組み合わせた世界を表現している。

 

 自宅のキッチンの窓から見える1cmの海の風景がいつのまにか心に染み付き、夏に覆われていたものが冬になり、枝のすき間から見えたり、知らない間に自分の中に積み重なり、作品づくりに関わっていると認識した。

 

 

 風土をテーマに、初めてフロッタージュにチャレンジした佐藤正行氏は、小樽軟石の有幌倉庫や富岡町にある倉庫を作品にした。小樽のイメージとして石造建築物の軟石の建物を選んだ。「軟石にこだわったのは、塩谷の洞窟で見た掘り出して運んだ軟石に魅せられたから。フロッタージュは、簡単ではあるが奥深さがある」と言い、会場の床のフロッタージュ作品を来場者に見せた。

 

 森万喜子氏は25年間美術教師を務め、現在、市内中学校で校長として勤務。抽象画を描き、子どもの時から見たり感じたりした結晶が、作品に反映されていると語り、「半透明なものが好きで、視覚はそれぞれに違い、芸術・アートというより、楽に観てもらえれば」と語った。

 

 2020年1月12日(日)まで開催の同展は、開館40周年記念した3本目の特別展。すべて地元小樽を拠り所にした企画展。40周年記念展の最後は、原点に戻り、北海道の洋画発展の先駆的画家の工藤三郎展を予定している。

 

 小樽・美術家の現在シリーズテーマ展「風土」

 10月26日(土)~2020(令和2)年1月12日(日)9:30~17:00

 市立小樽美術館(色内1) 月曜日・12/29~1/3休館

 入館料:一般600円、高校生・市内70歳以上300円、中学生以下無料

 

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