小坂秀雄の建築と一原有徳 小樽美術館再開

4月8日(水)から小樽市の教育施設再開に伴い、市立小樽美術館(色内1)では、3階の一原有徳記念ホールで予定していた「機能美の勝利 小坂秀雄の建築と一原有徳」を開催した。

 同館開館40周年記念をし、先行して2019(令和元)年7月6日に開催の建築史家の駒木定正氏講演会「小坂秀雄とモダニズム建築」に基づき、小坂秀雄の業績や逓信建築の様式、同時代の国際建築などを紹介する貴重な企画展。

 版画家の一原有徳氏は、同館の元の建物だった小樽地方貯金局で定年まで勤め、同館が壊されるという話を聞き、駒木氏宛に1994(平成6)年9月23日付けで手紙を書いた。

 小樽地方貯金局として1952(昭和27)年に小坂秀雄氏のモデル建築として建てられたもので、「小坂氏は、現代建築家として私の思っていた以上に立派な作品であり、駒木氏に力になってほしい」との同手紙をきっかけに、駒木氏は、この建物を調べることになったという。

 2008(平成20)年には、同館の古い図面から描きおこしてほしいとの、文学館の玉川館長から依頼を受け、同氏が勤務する北海道職業能力開発大学校の駒木ゼミ生の卒論テーマとして、原図を描き出し、それを基に制作した100分の1の模型も会場に展示。

 昭和時代の機能的・合理的な造形理念に基づく、モダニズム建築の貴重な初期作品であり、残存する建物が少ない中での貴重な建物で、改めて素晴らしさを知る機会となる。

 小坂氏は1912(明治45)年東京に生まれ、東京帝国大学建築学科卒業。2年後に逓信省に技手として入省。1951(昭和26)年には、優れた建築家を讃える「日本建築学会賞」を受賞。その翌年に旧小樽地方貯金局を建て、その時代の日本のトップの建築家が設計した貴重な建物である。

 会場には、同氏が描くアイディアスケッチの展示や代表作、外務省庁舎やKDDIビル、ホテルオークラなどの写真も展示。併せて、逓信省で技師として活躍した建築家の佐立七次郎・吉田鉄郎・山田守・吉井茂則らも紹介し、一原氏の貯金局時代に開いた個展に出品した作品も展示している。

 星田七重学芸員は、「小坂秀雄さんを調べると、一公務員であるが豊かな人。一原さんとは同世代だが会ってはいなかったが、反骨精神を表に出さず、真面目に生きてきた共通点があると思う。これまで、新館を建ててほしいとずっと思ってきたが、一原さんがなぜここまで思っていたのかが分かった」と語った。

 機能美の勝利 小坂秀雄の建築と一原有徳

 市立小樽美術館(色内1)3階一原有徳記念ホール

 4月8日(水)~7月12日(日)9:30~17:00 月曜定休

 観覧料:一般300円、高校生・市内70歳以上150円、中学生以下無料

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