蜃気楼の美術工芸品ずらり!運河館トピック展

 小樽市総合博物館運河館(色内2)第一展示室で、トピック展「蜃気楼の美術工芸品-高島おばけの時代背景-」が、4~7月の小樽の蜃気楼シーズンにあわせ4月8日(水)から始まった。

 新型コロナウイルス感染拡大防止措置のため、同館も含め休館だった教育施設が8日に再開となり、トピック展も公開となった。

 館内は、展示室の扉を開けたままにして換気に留意し、清掃や消毒などを徹底。開館時間を10:00~16:00に短縮している。

 同展は、同館学芸員の専門分野を市民に分かりやすく紹介する展示で、今回は、蜃気楼の研究を続ける大鐘卓哉学芸員が担当。

 珍しい現象の蜃気楼が、おめでたい図柄として親しまれていた江戸期以降の美術工芸品とその時代背景を紹介している。

 江戸時代~明治時代の蜃気楼を題材にした大皿や根付、初公開となるお盆や掛け軸など、個人のコレクション13点を展示し、2008(平成20)年に開催した特別展も一部紹介。

 江戸時代末期から明治にかけての探検家・松浦武四郎は、1846(弘化2)年5月に、小樽の海上を航海中に高島岬などが蜃気楼になって見えたと、「西蝦夷日誌」や「再航蝦夷日誌」に書き残し、当時の人々はそれを見て「高島おばけ」と呼んでいたとも記され、珍しい自然現象と語り継がれた。

 展示物の柏友徳図・秋里籬島著「東海道名所図会」(東海道の名所ガイドブック)の挿絵には、伊勢湾の沖に楼閣や旗が風にたなびき、四日市の海岸では、蜃気楼を見た人々の驚く様子が描かれ、江戸時代の蜃気楼の記録が残されている。

 紀元前中国の書物「史記」に蜃(しん)とは、海中に住む妖怪で大蛤との節があり、初公開となる掛け軸には、その伝承どおり、大蛤から吐き出された気に楼閣が表現されている。

 他にも、蜃気楼を題材にした工芸品が多く、文政年間(1818-1829)、松民斎(江戸時代の根付師)の木彫蜃気楼根付や江戸時代末の色絵蜃気楼図皿、文鉢や蓋付椀など、大蛤が出す妖気に楼閣が浮かび上がる様子が描かれている。

 石狩湾に稀に出現する蜃気楼(高島おばけ)に興味がそそられ、蜃気楼シーズン幕明けに相応しいトピック展となっている。

 大鐘学芸員は、「高島おばけを、現代に語り継いだ松浦武四郎が生きていた江戸時代には、蜃気楼がいかに浸透していたか、美術工芸品を見て感じとってもらいたい。ぜひ生の蜃気楼も見てもらいたい」と話した。

 運河館トピック展「蜃気楼の美術工芸品-高島おばけの時代背景-」

 4月8日(水)~7月30日(木)10:00~16:00

 総合博物館運河館(色内2)第一展示室

 入館料:300円、高校生・市内70歳以上150円、中学生以下無料

 ◎総合博物館運河館トピック展(外部)

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