海外で日本語教育発展に貢献 須藤展啓さん

 小樽出身で国際交流基金派遣の日本語教育専門家・須藤展啓さん(38)は、2007(平成19)年から、中東をはじめとする海外で日本語の指導を始め、日本語教育の発展に尽力すると共に、小樽を知る機会のない外国人に小樽の文化を伝えている。

 小中高で国語が得意な須藤さんは、北星学園大学英文科に進学。同大の留学生と交流する機会も多く、助詞の違いや日本語の奥深さを改めて感じ、大学3年の時に、単位取得を目的に日本語教授法を受講した。

 卒業後には、札幌でインターナショナルアカデミー(IAY)で、日本語講師養成講座(4~10月)を受講し、その年の12月に日本語教育能力検定に合格。その間、学習塾でアルバイトをして指導力を身につけるなど準備を整えていた。

 JICA海外協力隊に応募し、2007(平成19)年~2009(平成21)年、中央アジアに位置するキルギス共和国へ日本語講師として初めて派遣され、人生初の海外生活を体験。主にロシア語が公用語で、キルギス語が国家語のこの国では、学生のお兄さん的な存在だった。

 帰国後、2012(平成24)年~2014(平成26)年には、さらに知識を深めようと、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院で学んだ。

 卒業後、国際交流基金派遣の日本語教育専門家として、2014(平成26)年~2017(平成29)年、アゼルバイジャンの首都にあるバクー国立大学へ派遣され、日本語能力の向上と学習環境やカリキュラムの整備等に協力。

 アゼルバイジャンでは、1995(平成7)年にバクー市内の私立アジア大学に日本語学科が設立され、2009(平成21)年にバクー大学にも日本語学科が、さらに2011(平成23)年に、アゼルバイジャン言語大学にも日本語講座が開講。日本へ留学・研修を積んだアゼルバイジャン人の講師と共に、日本語教育の発展に尽力した。

 次に、2017(平成29)年10月~2020(令和2)年10月の予定で、イランの首都にある最大規模のテヘラン大学へ派遣されたが、1月に中東情勢悪化のため、任期を残して日本に戻り、その後、新型コロナウイルス感染が拡大し、戻れる時期がいつになるか分からない状況だ。

 テヘランは1千2百万人の人口で、海はないが坂の町で小樽と似ている。小樽を知らない学生が多いが、須藤さんから、町並みや運河・雪あかりの路などの写真を見せられると、興味を示して日本文化に親しみをもち、日本語学習に真剣に取り組んでいるという。

 海外派遣中は、年に1度、潮まつり時に小樽に戻っていたが、1月の真冬の小樽に戻ったのは大学院以来で、久しぶりの冬を過ごしたという。

 現在、アゼルバイジャンについての歴史や文化等が書かれた「アゼルバイジャンを知るための67章」(編著者廣瀬陽子・2018年5月初版)に、アゼルバイジャンにおける日本文化の受容とアゼルバイジャンにおける日本語教育の2項目について執筆している。

 須藤さんは、「小樽の知名度は高くないが、日本語を教える中で、小樽を伝える役目として貴重な経験。今後、国内で日本語教育の仕事をして、機会があれば、また海外で生活したい」と話した。