博物館ギャラリートーク なえぼ公園を解説

 小樽市総合博物館(手宮1)本館2階企画展示室で開催中の「歴史と自然が根づく場所わたしたちが見たなえぼ公園」のギャラリートークが、6月14日(日)11:00から企画展会場で募集した20名限定で開かれた。

 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため休館が続き、6月1日(月)から再開後の初のイベントとして、館内の換気やマスクの着用、人との間隔を2m空けるなど配慮して開かれた。

 企画展担当の山本亜生学芸員と能瀬晴菜学芸員が、交互にエピソードを交えて解説し、来場者は熱心に聞いていた。

 同公園は、住宅に囲まれた孤立林で、31haの中規模の面積ではあるが、豊かな自然が残り、四季折々の動植物の宝庫で、1年を通じて市民の憩いの場となっている。

 明治時代から営林署の苗畑として利用され、その頃から「なえぼ」と呼ばれ親しまれ、1921(大正10)年には、123万本のカラマツが植えられていた記録が残り、1997(平成9)年になえぼ公園になったと、能瀬学芸員から歴史について解説があった。

 開設当初は、北海道で育つ木について調査し、ケヤキやクヌギなどが人工的に植えられ、陸軍の土地であった証拠となる写真も来場者に見せた。

 山本学芸員は、なえぼ公園の動植物について語り、日本野鳥の会小樽支部による定期的探鳥会による記録から、公園の中の鳥で時代の変遷が分かり、シジュウカラ・オウルリ・キビタキなど100種類が記録されている。天然記念物のクマゲラも見ることができる。

 同公園内には二つ目川が流れ、豊かな自然が残り、水の生き物ではハナカジカ、動物では、エゾリス・ウサギ・テン・イタチ・タヌキなど、どんな生き物がいるのか、冬に雪の上の足跡から知る手がかりとなっている。

 研究者の調査により、植物は400種類、昆虫は641種類が記録されている。昆虫専門の能瀬学芸員は、実物のチューブがついた虫取り用の吸虫管を見せ、ライトトラップ、ピットホールトラップ、イエローパントラップなど虫の採取方法を紹介。

 カメムシ専門の山本学芸員によると、同園には100種類のカメムシが見つかっている。中でも環境指標昆虫のイブシキンオサムシは、その土地の環境を知ることができ、大規模工事をする前の環境調査をする時に使われているらしい。

 山本学芸員は、「なえぼの自然は昔とは変わり、昔にいなかった生き物も温暖化の影響で、オオミスジやオオアオイトトンボなども見られる。変化を記録することが博物館の仕事であり、これからも調査していきたい」と述べ、能瀬学芸員は、「同公園は歴史も深く貴重な環境。展示を通じて感じていただけたと思う」と話した。

 市内の女性は、「野の花が好きで、なえぼ公園へ2週間に1度の間隔で行き、季節を楽しんでいる。良くみかける花の他に、虫や鳥の話が聞けて良かった」と満足していた。

 企画展「歴史と自然が根づく場所わたしたちが見たなえぼ公園」

 総合博物館(手宮1)本館2階企画展示室 8月16日(日)まで会期延長

 入館料:一般400円、高校生・市内在住70歳以上200円、中学生以下無料

 ◎小樽市総合博物館本館企画展(外部)

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