<小樽晩夏光>第2弾 アーティストトーク

 緊急事態宣言下のため休館となっている市立小樽美術館(色内1)では、事前予約限定で、企画展「田仲ハルと舞踏に魅せられた美術家たち<小樽晩夏光>」の関連事業第2弾・アーティストトークを、9月5日(日)14:00から展示室で開催した。

 

 舞踏家の田仲ハル氏に影響を受け、これまで舞台やショーなどで関わりを持つアーティスト5名のトークイベントが開かれ、各作品の前で製作のプロセスなどを語った。

 

 ベトナム生まれのダム・ダン・ライ氏は、北海道の大自然に感銘を受けて来日し、現在小樽在住。真っ白な北海道でいろいろな色を使い、自分も観る人も楽しい作品をと、10年前から雪の影響で倒れたり曲がった木を素材に作品作りをしている。ユニークなタイトルの“いってきます”や、雪が解けて花が咲く元気な北海道をイメージした“blossom”など立体作品を出展している。

 

 ドローイングのAkiYo氏は、大作前のイメージで描くことが多いドローイングを、未完成で完成させる作品を手掛ける。

 

 対象物を探している頃、面白い動きをする田仲氏に出会い、自分の課題とした。2015(平成27)年から5年間で約3,000枚を描き、その中から数点を出展。体の中の静と動のエネルギーを、何とか紙の上で再現できないか、白線の中で活かしたいと念を込めて描いている。

 

 ファッションデザイナーの石岡美久氏は、いろいろな体験をする中で偏見や差別を見た時、“命はひとつ”多くの何かを救いたい気持ちで、根本のテーマは人間として服作りを始めた。衣装づくりをしている時、調子の良い時は、作りながら踊っている自分がいるという。

 

 田仲氏とAkiYo氏と出会い、「自分の作った服を着てほしいと一目惚れし、ファッションショーに出演してもらった。体の面白さや動きを伝えたい。いろいろなものと舞踏がコラボした面白い世界をより多くの人が楽しめ、1つでも世界が変わるようなものづくりをしたい」と語った。

 

 彫刻家の福江悦子氏は、粘土や木彫を中心に出展。彫刻作品「烈風」について、「田仲氏にモデルを6〜7回頼み、目の玉を彫らなくても見ている方向が分かる作品にしたかったが、見る人が動くことで彫刻の目が動くよう見える作品にした。顔の前に風が通る様子を表現し、舞踏と係ることで新しいエッセンスが吹き込まれる」と述べた。

 

 インストレーションを得意とする美術教師の上嶋秀俊氏は、田仲氏と付き合いが一番長く、2015(平成27)年に田仲氏の舞台美術に使用した「むこうから」と、2019(平成31)年に製作をスタートした「いのちのかけら」の2点を出展。「水も動物も自然ではあるが、自分が思い描いていたゆっくりとした自然観ではなくて、動物・人間も含めて内的なエネルギーが外にぶつかる強いものを製作したいと思い始めた。

 

 赤・黒・反対の緑、力強い色彩やこれまであまり用いて来なかったギザギザした形など、激しい様子が見られる。普段とのメンバーとは違い、舞踏をキーワードに関わり、どこかしらに共通点もあり、皆さんそれぞれいろいろなことを考えていて、表現としてのファッションでもあり刺激的で興味深い」と話した。

 

 最後に、グラフィックデザインを手掛ける田仲氏は、「もともと70年代の後半、小樽の北方舞踏派と関わり、一原氏や詩人・写真・映画・絵画など、当時の芸術家や文化人が舞踏と関わっていた歴史があった。

 

 かつて、舞踏を創り上げた土方巽さんの頃にも、いろいろな芸術家や文化人が集まり、お互いに勉強し合い影響し合っていた歴史があり、今も自然とそうなってきている」と語り、同館でも、同氏を中心に、次世代のアーティストたちとのコラボレーションを展開中だ。

 

 最終回の関連事業第3弾は、9月23日(木・祝)18:00~19:00、舞踏公演「小樽晩夏光」を開催。田仲ハル氏と極北会が出演を予定している。

 

 ◎市立小樽美術館(外部)

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