第27回児童文学ファンタジー大賞 佳作は“なまこ壁の蔵”

 第27回児童文学ファンタジー大賞(斎藤惇夫委員長)は、9月12日(日)10:00からオーセントホテル小樽(稲穂2)で最終選考会を開き、愛知県名古屋市在住の原あやめさん(73)の作品「なめこ壁の蔵」が佳作に選ばれた。

 

 原さんは、名古屋大学文学部哲学科心理学専攻科を卒業し、1985年「さと子が見たことで」で第26回講談社児童文学新人賞受賞。翌年、講談社から同作品を出版。峠の会同人・中部児童文学会会員・中部ペン会員。

 

 特定非営利活動法人絵本・児童文学研究センター(工藤左千夫理事長)では、臨床心理学者の故河合卓雄さんの協力を得て、児童文化の新たな模索と後世に伝承しうる作品の創造を目指し、1994(平成6)年、長編小説を全国から公募する、国内でも珍しい文学賞を創設した。

 

 厳しい選考でも知られ、大賞は、1995(平成7)年第1回の梨木香歩さんの「裏庭」のみで、その後、大賞に該当する作品はないままで月日が過ぎ、今回もなかった。

 

 今回こそはと期待が高まる27回目は、2020(令和2)年11月1日〜2021 (令和3)年3月31日に公募を行い、1,715作の応募があり、1次選考通過は13作、2次選考通過は6作、最終選考に4作が残った。

 

 最終選考会には、斎藤委員長・工藤副委員長・藤田のぼる委員(日本児童文学者協会理事長・児童文学評論家)・中澤千磨夫委員(北海道武蔵女子短期大学教授・本センター評議員)、新たな委員として、茂木健一郎氏(脳科学者)・アーサー・ビナード氏(詩人)、立会人に越前谷幸平大賞運営委員長・山口平教副委員長・大橋一弘理事が出席した。

 

 1時間半以上も作品についての講評が続き、全員一致で、原さんの作品を佳作に選び、工藤氏は、「面白かった。歴史ファンタジーで、主人公も脇役もうまく書かれている」と話し、斎藤委員長は、「読者として読めた作品で、力作をありがとう。昭和44(1969)年生まれの女性の話で、近代の夜明けを生きる桜子に共感した」と高く評価した。

 

 27回続いた同大賞は、運営側の高齢化を理由に28回目を以って幕を閉じることが決まった。

 

 今回から選考委員となったアーサー氏は、「10年、20年経ったも古くならない文学作品を出してもらいたい」と話し、同じく選考委員となった茂木氏は、「こども向けの小説は、高い質と倫理観が求められる。この理想が、北の大地に根付き素晴らしいこと。命ある限り続けるべき」と、継続に期待した。

 

 ◎絵本・児童文学研究センター〜児童文学ファンタジー大賞(外部)

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