小樽文学館企画展“ゲームの本” 雑誌・攻略本・同人誌

 市立小樽文学館(色内1)の企画展第5弾「~ザッシ・コウリャクボン・ドウジンシ~ゲーム本」が、3月5日(土)から同館企画展示室で始まり、この規模で、ゲーム本の誕生からゲーム雑誌・攻略本などに特化した企画展は、日本でも初開催となる。

 

 同館では、2012(平成24)年からゲームをテーマとした「テレビゲームと文学」を開催し、2014(平成26)年「小樽・札幌ゲーセン物語」、直近では2021(令和3)年に「小樽・札幌ゲーセン物語展」を2回開催してゲームセンターを再現するなど、当時のゲームファンに好評を得ていた。

 

 今回の第5弾目は、インターネットが普及する前からゲーム文化を陰で支えた雑誌・攻略本・同人誌にスポットを当て、時代の変遷やその繋がりなどを紹介している。

 

 企画構成には、同企画展初回で出会ったフリーランスの藤井真樹氏とゲームコレクターで研究家の山本耕平氏、北海道大学大学院文学院博物館学研究室博士後期課程の寺農織宛氏が携わり、ゲームファンには見所満載の展示となっている。

 

 ビデオゲームは、1978(昭和53)年のスペースインベーダーの登場を契機に流行し、ゲーム雑誌の創刊が相次ぎ、プレイヤーをサポ—トした攻略本や、プレイヤー同士の情報共有を目的とした同人誌などが発刊された。

 

 インターネットが普及する前、ゲーム雑誌もない時代に攻略本の先駆けとなる、株式会社マトリックス代表取締役の大掘康祐氏が高校生の時に「うる星あんず」の名で発行した「ゼビウス」(ナムコ1983年)の攻略同人誌にはじまり、のちにポケモンシリーズを作るゲームクリエイターの田尻智氏も高校生の頃、同人誌「ゲームフリーク」を執筆。

 

 その後、同氏はゲームフリークを1989(平成元)年に設立し、ゲームの開発に着手した。会場では、貴重な実物を展示し、攻略本が一般的ではなかった時代だからこそ、ゲームファンに大きな影響を与えたことが伺い知れる。

 

 会場の壁ケースには、山本氏が25年間かけて集めたゲーム雑誌や攻略本850点を展示し、来場者の注目を集めていた。

 

 アスキー出版のファミコン通信を1986(昭和61)年7月創刊第2号から1989(平成元)年11月の第4巻第23号までと、徳間書房のファミリーコンピューター、日本ソフトバンク出版部BEEP!メガドライブ、攻略本は、勁文社・双葉社・徳間書店・徳間コミュニケーションズに分類され展示。

 

 ゲーム雑誌のはじまりや、ファミコン専門誌・次世代ゲーム機専門誌・出版社ごとの傾向などが分かる系統図が7枚が張り出され、山本氏が手書きでまとめた図を基に仕上げた。濃厚でかつ正確な内容で、ここまでまとめるに要した時間は計り知れない。

 

 アスキーは、1986(昭和61)年6月にファミコン通信が発行され、1995(平成7)年12月にファミ通になり、現在に至るまでの関連出版物や会社の合併情報も事細かく記されている。

 

 徳間書籍では、1985(昭和60)年日本発ファミコン専門誌「ファミリーコンピューターMagazine」創刊、ここから多くのゲーム雑誌や攻略本が生まれた。

 

 ゲームプレイヤーをサポートした様々な攻略本が出版された中でも、ファミコンソフト「スーパーマリオブラザーズ」(任天堂1985年)の攻略本は、1985(昭和60)年と1986(昭和61)年に総合ベストセラーランキング2年連続1位(計130万部)を獲得した。

 

 札幌そごう(現札幌エスタ)9階のゲームコーナーの常連たちが集い、1984(昭和59)年2月に攻略本の発行から正式に立ち上げ、団誌「おーるらうんど」を発行した、ビデオゲームサークル「札幌南無児村青年団」についても紹介している。一切攻略記事を載せずに、ストーリーや音楽、キャラクターの深堀を柱に誌面を構成したというもの。

 

 このほか、1996(平成8)年の部屋を再現したスペースや、札幌出身のゲーマーの高橋名人の貴重な伝説本も展示し、初回ほか2回の展示替えを行い、何時間でも何回でも来場して楽しめる企画展となっている。

 

 山本氏は、「ゲーム本だけの展示は日本初となり、雑誌・攻略本・同人誌などから歴史を追える850点を揃えている。雑誌等のバックナンバー展示が見どころで、表紙がずらりと並んでいる様子は壮観であり、系統図・攻略本の説明なども楽しんでもらいたい」と話した。

 

 企画展「~ザッシ・コウリャクボン・ドウジンシ~ゲームの本」
 3月5日(土)〜4月24日(日)9:30〜17:00(3/22除く月曜日・23・28・4/4・11・18休館)
 展示替え:3/5(土)〜25(金)・26(土)〜4/8(金)・9(土)〜24(日)
 市立小樽文学館(色内1)企画展示室
 入館料:一般300円、市内高校生・70歳以上150円、中学生以下無料

 展示主催者による展示解説
 解説者:山本耕平氏
 3月20日(日)・4月3日(日)・24日(日)14:00〜15:00
 申込:0134−32−2388 文学館

 

 ◎市立小樽文学館企画展・特別展(外部)

 ◎関連記事