脚本家・八田尚之展6/1まで開催 小樽文学館

 市立小樽文学館(色内1・亀井志乃館長)では、小樽出身の脚本家・八田尚之氏の「舞台は生命の花火 八田尚之展」を開催中で、文芸映画のシナリオで一時代を築く・戦後の娯楽映画が大ヒット・手織座を結成した3つの柱で展開し、同館所蔵の写真や生原稿など関係資料150点を展示している。

 

 同氏は、現在の小樽潮陵高校を卒業後、1924(大正13)年法政大学に入学し上京。20歳で明治大学に席を置き大学生活を送るも、落語に入れ込み退学。2年後には映画界に入り、1928(昭和3)年、23歳でシナリオデビューを果たし、映画のシナリオライターとして活躍。

 

 石坂洋二郎原作「若い人」を脚色したことがきかっけで、文芸映画を切り拓き、一時代を築く。「若い人」はキネマ旬報1937(昭和12)年度ベストテン第5位となる。

 

 1950(昭和25)年、45歳の時に女優の宝生あやこと出会い、2年後に結婚。脚本家を続けながら、1954(昭和29)年に手織座を結成し、劇団主宰者となる。

 

 女優の魅力を引き出す能力もあり、1955(昭和30)年に活躍中のひばり・チエミ・いづみのスケジュールを合わせ、三人娘の元祖となる娯楽映画「ジャンケン娘」を発表。

 

 1964(昭和39)年落成したばかりの小樽市民会館で、小樽に滞在した際に着想を得た戯曲「ふるさとの詩」で、念願の故郷・小樽で初公演。その3か月後に、狭心症で58歳の若さで生涯を閉じた。

 

 3回忌を数えた1966(昭和41)年8月に、祝津の観光名所・鰊御殿側に碑が建立され、中央部には、友だちと海で遊んだ思い出をうたった詩「がんぜ」が刻まれ、肖像のレリーフとともに、モットーにしていた「胸底にしまい忘れた 皆の 素朴な魂を ゆさぶる芝居をつくりたい」との熱い想いも刻まれている。

 

 劇団手織座「人間最後の誇り」の成果に対し、1969(昭和44)年に明治百年記念芸術祭奨励賞受賞。劇団手織座「楢山節考」の成果に対し、1982(昭和57)年芸術祭優秀賞と第6回シナリオ功労賞など数々の賞を受賞している。

 

 亡くなる直前に完成した戯曲「罪」の生原稿や、劇団創立10周年記念公演の「罪」のポスター、1984(昭和59)年に同館で「生生躍動八田尚之展」が開催された時の手織座メンバーが制作した「ふるさとの詩」の舞台模型も展示されている。

 

 亀井館長は、「どの作品もどんな逆風があっても逞しく生きる姿を描いている。そういう人たちを描いた八田氏の情熱をぜひ感じてほしい」と、来場を呼びかけた。

 

 舞台は生命の花火 八田尚之展 4月1日(土)〜6月4日(日)

 市立小樽文学館(色内1)企画展示室 月曜日・5月9日(火)〜11日(木)休館

 観覧料:一般300円、高校生・市内70歳以上150円、中学生以下無料

 

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