対談 日本画家・福井爽人氏×美術評論家・奥岡茂雄氏

 市立小樽美術館(色内1)では、開催中の特別展「追憶の歌〜日本画家・福井爽人展」に関連し、6月10日(土)同館1階研修室で、美術評論家の奥岡茂雄氏との対談を開催。85名が参加して作品についてや福井氏の人柄について知る機会となった。

 

 前回の1994(平成6)年の福井氏の回顧展でも開催され、2回目の今回は、福井芸術の真髄に迫りその魅力が語られた。

 

 奥岡氏は岩見沢出身の元地方公務員で、1973(昭和48)年に道立近代美術館に勤務。専門は近代日本画の研究。在職中に、北海道教育大学札幌校・東京芸術大学・北海道大学文学部などで非常勤講師を務めた。

 

 はじめに、2000(平成12)年制作の小樽港をバックに蘭の花を描いた「華と灯台」の作品をスクリーンに映し、奥岡氏は、「広くゆったりとした古い港を思い出しながら描いた作品。芸術作品は生き方の鏡。生き方が込められた感覚的なイメージが美である。作家の人生を見られる」と解説。

 

 福井氏は、旭川に生まれ小樽で育ち、小樽潮陵高校から札幌北高校を経て、日本大学芸術学部に進学。1961(昭和36)年東京芸術大学美術学部日本画専攻に入学し、1967(昭和42)年同大学院修士課程修了。

 

 1898(明治31)年創立の美術家の団体・日本美術院の公募展(院展)で、1969(昭和44)年に奨励賞を受賞後は、6回の奨励賞を得て、1982(昭和57)年に「古陽」で、1983年に「風歴」で日本美術院賞を受賞。1991(平成3)年「秋桜」で内閣総理大臣賞、1993(平成5)年「城下」で院展文部大臣賞を受賞。

 

 1994(平成6)年に画業30年を記念し同館で回顧展を開催。2002(平成14)年に日本美術学院理事となる。2005(平成17)年から芸大名誉教授となり、日本を代表する日本画家。

 

 奥岡氏は、福井氏の作品について制作のエピソードを尋ねながら、「美しく、少し悲しいと言う人もいて、青を主調として青橙な色彩と繊細なスケッチで大切に描いている。生ではない、生をオブラードで包み込んだような“かそけき(淡い・ほのかな様子)シビアさ”」と、微妙なニュアンスで福井芸術の魅力を語った。

 

 同特別展は7月23日(日)まで。月曜休館。

 

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