関係者らが視察 小樽公園の顕誠塔修復工事始まる!

 小樽顕誠会(堀口雅行会長)が維持管理している、小樽公園(花園5)桜並木の奥の広場にそびえる顕誠塔は、建立100年が経過し老朽化が目立つため、8月に入って修復工事が始まった。

 

 大規模修復工事を行うのは今回が初めてで、50年前の修理では一部石の入替えや金鵄の塗り直しを行っている

 

 2022(令和4)年5月の招魂祭の開催時には、正面の市章が刻まれた岩盤が剥がれ落ち、塔の下に放置されたままで石垣の倒壊なども見つかり、痛々しい姿で市民や故郷を思う地方に住む人からも心配の声が相次いだ。

 

 同会事務局では、4月末に破損に関する情報をもらっていたという。

 

 工事費は約600万円を見積り、今年1月、同会は合祀者遺族と関係者に支援を依頼。小樽商工会議所などからも寄附が集まり、小樽市議会第2回定例会でも図り念願の工事が始まった。

 

 9月7日(木)13:30から、阿部建設株式会社(緑1)土木部参事・岩鉄敏照品質管理課長の案内で、建築史家の北海道職業能力開発大学校・駒木定正特別顧問(工学博士・一級建築士)と堀口会長・笠原事務局長、市福祉保険部らが顕誠塔の視察を行った。

 

 堀口会長の知人でもある駒木氏に、塔の成り立ちなどを調査してもらい、どのような価値があるのか知るための視察だった。

 

 顕誠塔については設計図などは見つかっておらず、同会としても正しい情報が書かれていないか、小樽市に問い合わせている。

 

 戦前は「昭忠碑」と呼ばれ、戦没者を慰霊、戦後は軍事色を払拭するため小樽に貢献した人を合祀するとした。

 

 小樽市史によると、定かではないが、設計は東京帝大の伊藤忠太衛門教授と思われ、着工後18年かけて1923(大正12)年5月に完成した。翌年の1924(大正13)年から、市内で一番早い祭りと慕われた招魂祭が始まった。

 

 2023(令和5)年5月15日に78回目の招魂祭を執り行い、新たに4名が合祀され、既合祀者3,484名と郷土功労者1,245名を合わせた4,729名を慰霊している。

 

 工事前には同建設がドローンで破損具合を把握。土台も含め高さは16m。その先端には、日本軍人のシンボル「金鵄」が飾られている。

 

 金鵄は羽を広げて姿で鋭い目と爪を持つ。幅2m78cm、球も入れて高さ1m60cm。首・羽の部分は胴体と組み合わせている。50年前に金箔を塗った部分が残っている。

 

 金鵄本体は空洞と思われるが、球は中身が詰まった状態。羽は左右対称ではなく、いかにも飛びそうな様子を作り出している。ところどころに穴や亀裂が見られる。

 

 塔は御影石(花崗岩)で作られ、一部欠けている部分もあり、つなぎ目には種が入り木や植物が生えているところも見られ、塔の本体部分に数カ所、卵鏃(らんぞく)飾りと言う繰り返しの模様が描かれている。塔の中腹部分には、軍人の銅像が2体あったが、いつまであったのかは不明。

 

 駒木氏は、「初めて上り、まずは像(金鵄)が大きく、彫刻もしっかりとしている。由来が分かると良いと思う。時代背景を残しているものと感じた。

 

 石がどう組まれているか分かると修理もしやすいと思うが、設計図も見つかっていないので、きちんと調べたい」と話した。

 

 現在、剥がれ落ちた市章の岩盤の貼り付けが終わり、塀を直している最中で、今後、塔の目地に生えた木を取り除き隙間などを補修し、金鵄の補修にも取り掛かり、完成は10月中を予定している。

 

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