保存修理工事中の旧日本郵船小樽支店外観見学会

 2020(令和2)年7月から大規模保存修理工事を行っている、旧日本郵船株式会社小樽支店()の外観工事がおおむね完了したため、小樽市教育委員会では、10月25日(水)13:30と15:00の2回の外観見学会を実施し、約20名が参加した。

 

 昨年10月15日(土)には、一般を対象に建物内部の見学会が実施され大勢が参加。今回は、足場が組まれ壁紙工事の最中で、危険性などを勘案し外観のみの説明に留めた。

 

 講師は、道庁赤レンガの修理にも携わり、数々の歴史的建造物を手掛けている、公益財団法人文化財建造物保存技術協会札幌監理事務所技術主任の近藤展由氏が務めた。

 

 同建造物は1900(明治37)年に着工され、1902(明治39)年10月に落成。近世ヨーロッパ復興様式の石造2階建ての建物で、1969(昭和44)年に国の重要文化財に指定された。壁として石を積んでいる石造で、石を積んでいる重要文化財では大変珍しいそうだ。

 

 重要文化財は建築基準法に除外されるところだが、1995(平成7)年1月に発生した阪神淡路大震災以来、不特定多数の人が利用する大規模建物の耐震診断が見直された。

 

 地震で倒壊すると失われてしまうと、重要文化財も補強しようと見直され、2015(平成27)年・2016(平成28)年に耐震診断し、倒壊しないまでも不安を感じることが分かり、耐震補強をメインに工事が行われている。

 

 そのほかに、前回修理の1983(昭和58)年から石材・内装修理を行い、40年弱が過ぎたため屋根のふき替え、内部の修理を実施した。

 

 積み木のように石が積まれ、地震があるとずれこむ危険性があるため、石積みの壁に6cmの穴を開け引張材(アラミドケーブル)を挿入し、下で固定し積み木を抑えるような補強。地震で横揺れすると水平方向のズレを懸念し、天井裏の見えない所に筋交いを入れて補強。

 

 建物の他に石塀も重要文化財に指定されており、石積みを鉄骨で倒れないよう支えを付け、石塀も補強した。

 

 雨漏りの影響で外壁石材に水が入り、正面の壁で石の色が違う所があり、冬期間に凍結して膨張し爆裂した箇所が何カ所もあり、悪い所を取り除き新しい石にした工事と、爆裂した箇所が薄い場合は、石に似せたパテ(擬石)を作って埋める補修をした。

 

 石壁には小樽軟石を使用。奥沢や桃内の石は、札幌軟石に比べて吸水率が高く、凍結・融解を起こしやすく塩害に弱く、風による風化も激しい。現在、小樽軟石は取れないため、市内で解体の石をもらい悪いところを取り換えたが、石塀の補修には足りないため、一部札幌軟石を使用。

 

 内部はしっくいや天井が雨漏りの影響で、落ちた箇所を補修。2階の外から見える白い窓の貴賓室は、菊模様の金唐革紙という特殊な壁紙を使用。雨漏りの影響で剥離しているため、復元する修理を行っている。

 

 2020(令和2)年7月に工事が始まり、本館及び石塀周辺に外部足場・素屋根を設置・内部の養生。2021(令和3)年に耐震補強工事、2022(令和4)年屋根のふき替えと外壁石材工事、2023(令和5)年に石塀補強・内部建具などの修理。

 

 今後、来年度にかけて壁紙の修理。壁紙を作るのに1年・2年かかり、天井・しっくいの悪い所の塗り替え工事、2024(令和6年)6月の竣工を目標にしている。

 

 30分ほどかけて工事の説明があり、参加者は「完成を楽しみにしている」と期待を寄せていた。

 

 ◎重要文化財旧日本郵船株式会社小樽支店の保存修理工事について(外部)