小樽運河プラザ3番庫で博物館最後の講座「鰊盛業図屏風を読む」

 小樽市総合博物館(手宮1)は、3月24日(日)に「鰊盛業図屏風を読む」と題し、小樽を様々な角度から考える博物館ゼミナール小樽学を開催。31日(日)で閉館となる運河プラザ3番庫での最後の講演会となった。

 

 10:30〜13:00と16:00〜17:00に、同館運河館に常設展示されている「鰊盛業図屏風」を展示ケースから外し、小樽市観光物産プラザ(色内2)3番庫ギャラリーに、当時屏風が置かれていたと思われる向かい合わせの位置で並べ特別公開した。

 

 13:00からは、日本近代美術史の研究者・宮城学院女子大学の井上研一郎名誉教授が、基調講演「鰊盛業図屏風ー画家の想いをさぐるー」を、北海道立近代美術館・五十嵐聡美学芸部長が「漁場を描くー今昔」について、屏風の舞台となった小平町教育委員会から長澤政之氏が、鰊盛業図屏風筆者久保田金僊と花田家について解説した。

 

 花田傳七が発注した海岸ノ漁場屏風(鰊盛業図)は、1903(明治36)年に久保田金僊(1875〜1954)が18歳の時に描いた作品。日本画技法のひとつで絹本着色。寸法は173cm×368cm。

 

 鰊漁最盛期の明治30年代の留萌郡小平町の鰊漁場で、鰊粕製造の様子を、六曲一双屏風の両隻にわたり克明に描写している。

 

 大勢の人々が作業をしている様子が描かれ、角網から鰊を大タモですくい上げる人や、もっこを背負う人、筵(むしろ)の上に粕玉を広げ乾燥させる人などが細かく描かれている。

 

 1904(明治37)年にセントルイス万国博覧会に出品して評価を受け、北海道の鰊漁を描いた代表的な資料として知られている。

 

 会場に右と左に設置し、右隻の洋上に点在する島々、左隻には島影はなく水平線條に煙を吐く蒸気船の姿があり、活気を帯びていた小樽港の存在を示していると考えられ、両隻を向かい合わせに見ると、左右に見える光景が再現され、これまでのケースでの展示では分からない新たな発見もあった。

 

 公開を楽しみにしていた市民は、「いつもガラス越しだったので、直接見られると知り来てみた。素敵に見せてもらって嬉しい」と話していた。